今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2021.3.6.

 

 

 

 今から遡ること42年。右肩上がりの経済成長を続ける日本では、インベーダーゲームが大流行。ゲームセンターや喫茶店にゲーム台が導入され、それを目当てに連日若者が集まりました。しかし、非行の温床となることが問題視されブームは1年半足らずで終焉に向かいました。ゲーム至上最大のヒットは、テクノサウンドのオマージュとなりイエロー・マジック・オーケストラのファーストアルバムに収録され、アメリカではパソコンブームの火付け役となり、後進のゲームにも多大な影響を与えました。その他にも、ソニーのウォークマンや日本電気(NEC)のパソコン、東芝のワープロ、シャープのカード電卓などこの年に発売されていて、今の日本のテクノロジーの気配があちらこちらに見え始めた時代です。

 

 そんな時代の空気感は、変化を受け入れて古いものを捨てようとする若者文化とこれまでの慣習や伝統を重んじる伝統文化が対立し、排他的な雰囲気が漂う時代。今回紹介する映画は、そんな新旧の価値観が混在するチグハグな時代の家族を描いた物語です。若き日の渡瀬恒彦・桃井かおるが主演する「神様がくれた赤ん坊」。同棲するカップルが暮らすアパートにある日突然、5才くらいの男の子が連れて来られます。「あけみ」という女性が産んだ子供だけど母親は海外へ駆け落ちしてしまったと言います。そして、父親の可能性があるのが漫画家志望の三浦晋作と他に4人。そこから、男の子の父親探しが始まります。一方、3年前に母を亡くした森崎小夜子は、自分のルーツを探す旅へと一緒に九州へ向かいます。

 

 3人は、尾道、別府、天草、長崎、北九州へと旅をします。父親候補を訪ねて一緒に旅を続けているうちに、最初は父親探しだったのが養育費を取ることに目的がすり替わって行きます。晋作は男の子との共通点を見つけ、いつの間にか男の子の幸せを考えるようになっている自分に気づきます。一方、小夜子は母一人子一人の自分の家族を振り返り、苦労して自分を育ててくれた母への思いと一人ぼっちになった自分と男の子を重ね合わせるようになっていきます。そして、最後の父親候補を訪ねた後、自分達の気持ちが同じなんじゃないかと気づきます。

 

 結婚もせず、出産もせず、家族になるという新しい家族の形を提示しつつ、何が人を家族たらしめるのか考えさせられる映画です。当時、血のつながりだけで家族としてがんじがらめにさせられる古い考え方に警鐘を鳴らしたのかもしれません。コミカルなテンポで展開する物語の中で、登場人物がそれぞれの胸の内を言葉にする場面は多くありませんが、理屈では表せない心が感じるものの大切さが描かれている様に思います。世間体を気にして「こうあるべき」と行動を制限する考え方は、時々私たちを苦しめます。こうした社会的圧力や思い込みが一人一人の幸せを邪魔する障壁となってはいけないなと感じた作品でした。

 

神様がくれた赤ん坊

DVDパッケージ

公開日:1979年12月28日

上映時間:91分

ジャンル: ドラマ

監督:前田陽一

キャスト: 桃井かおり, 渡瀬恒彦, 曽我廼家明蝶, 河原崎長一郎, 吉幾三

【内容】

喜劇映画の秀作を数多く残した名監督・前田陽一が手掛けたドラマ。同棲中のカップル・小夜子と晋作の下を見知らぬ女が訪れ、少年は晋作の子供だと一方的に押し付けて消えてしまう。身に覚えのない晋作は、仕方なく小夜子と共に少年の面倒を見るが…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●神様のくれた赤ん坊 [DVD] ¥1,980〜

●amazon primeでも視聴できます。

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