今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。


これまでのライブラリー
2020.12.19.
今回は、1973年にタイムスリップ。この年は、新御三家の郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎が大活躍し、花の中三トリオと呼ばれた桜田淳子や山口百恵もこの年にデビューしました。カラーテレビの普及に伴って、お茶の間の人気者が数々誕生しました。また、この年はオイルショックにより物価が急上昇し、大手商社などの買い占めが社会問題となりました。その波及現象としてトイレットペーパー買占め騒動がオイルショックの象徴的な出来事として教科書にも紹介されています。しかし、よくよく話を聞くとこれはデマだったことがわかります。今年のコロナ禍でも同様にトイレットペーパーが街からなくなる現象が起こりました。このような集団心理は昔も今もあまり変わってないようです。
時代は、大量生産大量消費へと生活様式は激変し、銀幕のスターが活躍していた映画からテレビの中で活躍するお茶の間の人気者へと変わっていきました。その中で、都会と田舎の格差がつまびらかになり田舎者が劣等感を募らせ、昔ながらの風習や文化が否定され、大家族が崩壊していったのもこの時代。その証拠に60年代中頃から家族がテーマの映画は非常に少なくなっていきます。そして、旧態然として残る文化の暗部を炙り出すような作品が多く発表されています。今回ご紹介する映画は、斎藤耕一監督の「津軽じょんがら節」。東京のヤクザ者とその恋人がかつて生まれ育った寂れた港町に舞い戻ってくるところから始まります。主演は、江波杏子。色のない寂しい漁村に赤いコートを着て現れる都会の女を情感豊かに演じています。この作品でキネマ旬報主演女優賞を獲得し、代表作となりました。この漁村で生まれ育ったにも関わらず、都会の色に染まった女と何処の馬の骨とも分からぬ男。そして、警戒しながらもそれを受け入れざるを得ない地元住民。都会を象徴するようなスリーピースの背広と赤いコートが貧しい暮らしぶりの漁村の中で、終始違和感を漂わせています。
今回、詳しいストーリーはネタバレになってしまうので控えますが、貧しい漁村で生きていく厳しさ。家族を求めて帰ったのに、そこには温かく迎えてくれる家族はすでにいない侘しさ。それでも、人の温もりを求めずには居られない人間の物悲しさ。孤独を噛み殺して生きていかねばならない宿命。そんな、行き場のない感情が日本海の波のうねりの中に静かに飲み込まれていきます。今の私が観ると、都会の華々しさの裏側にある行き場のないものを受け入れてきた地方の懐の深さと逞しさを感じますが、戦後を生き抜いてきた当時の人たちはどんな思いで観ていたのでしょう。辛いことはもう沢山、主人公のように新しい世界に生きるんだって思っていたのかな。
津軽じょんがら節
公開日:1973年12月20日
上映時間:103分
ジャンル: ドラマ
監督:斎藤耕一
キャスト: 江波杏子, 織田あきら, 中川三穂子, 寺田農, 戸田春子
【内容】
津軽のさびれた漁村の停留所に降り立つ一組の男女。東京のバーで働いていたイサ子がイザコザを起こして追われている徹男と生まれ故郷の村に帰ってきたのだ。何もない田舎町で退屈する徹男は、盲目の少女ユキと知り合う。最初はからかうつもりだったが、徹男を慕ってくるユキに次第に愛しさを感じるようになる。だが平穏な日々は続かなかった…。都会から逃げてきた男女と、人と風土の関係を描いた、叙情派・斎藤耕一監督の代表作!(「Oricon」データベースより)
●津軽じょんがら節 ≪HDニューマスター版≫ [DVD] ¥4,180〜
●amazon primeでも視聴できます。
目次
- No.1: 騒動頻発の年 1972年(昭和47年)の名作
- No.2: 日本中が沸き立った年 1964年(昭和39年)の名作
- No.3: 終戦から5年後の日本ってこんな感じ 1950年(昭和25年)の名作
- No.4: 昭和の歌姫誕生の年 1949年(昭和24年)の名作
- No.5: 平成の始まりはバブリーな恋愛映画 1989年(平成元年)の名作
- No.6: ジャパニーズホラーの金字塔 1998年(平成10年)の名作
- No.7: 皇太子様ご成婚の年 1993年(平成5年)の名作
- No.8:両陛下ご成婚の年 1959年(昭和34年)の名作
- No.9:10年ひと昔といいますが… 2009年(平成21年)の名作
- No.10:マリリンモンローが謎の死を遂げた年 1962年(昭和37年)の名作
- No.11:若者文化が花開く、神武景気に沸いた年 1956年(昭和31年)の名作
- No.12:アポロ11号が人類初の月面着陸をした年-1969年(昭和44年)
- No.13:サンフランシスコ平和条約が発効された年-1952年(昭和27年)
- No.14:ケネディ大統領が暗殺された年-1963年(昭和38年)
- No.15:バカヤロー発言で衆議院が解散した年-1953年(昭和28年)
- No.16:団塊世代が小学校に上がる年-1954年(昭和29年)
- No.17:ナチス軍・ヒトラーが世界を席巻した年-1940年(昭和15年)
- No.18:日本の運命が変わった年-1941年(昭和16年)
- No.19:東京ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.20:「欲しがりません勝つまでは」が流行った年-1942年(昭和17年)
- No.21:マハトマ・ガンディーが銃弾に倒れた年-1948年(昭和23年)
- No.22:暴動や大規模デモ、暗殺…大事件が多発した年-1968年(昭和43年)
- No.23:第一回紅白歌合戦が放送された年-1951年(昭和26年)
- No.24:東京都の人口が世界第一位になった年-1957年(昭和32年)
- No.25:東京で初めてスモッグ警報が出された年-1965年(昭和40年)
- No.26:東京タワーが竣工した年-1958年(昭和33年)
- No.27:原水爆禁止日本協議会が結成された年-1955年(昭和30年)
- No.28:17ヵ国が独立。脱植民地が進んだアフリカの年-1960年(昭和35年)
- No.29:最初で最後ビートルズが来日した年-1966年(昭和41年)
- No.30:ケネディ大統領が誕生した年-1961年(昭和36年)
- No.31:出生率3.43 昭和最高のベビーブームの年-1947年(昭和22年)
- No.32:昭和天皇の詔書にて人間宣言された年-1946年(昭和21年)
- No.33:日本が敗戦・終戦を迎えた年-1945年(昭和20年)
- No.34:戦局悪化の一途、連合艦隊事実上壊滅の年-1944年(昭和19年)
- No.35:戦争の悲劇。戦時猛獣処分の年-1943年(昭和18年)
- No.36:国民徴用令公布など国民生活激変の年-1939年(昭和14年)
- No.37:満州事変から満州国建国 強い日本があった年-1932年(昭和7年)
- No.38:佐藤栄作が非核三原則を言明した年-1967年(昭和42年)
- No.39:芥川賞・直木賞が設立された年-1935年(昭和10年)
- No.40:クーデター未遂2・26事件が起こった年-1936年(昭和11年)
- No.41:盧溝橋事件に端を発し日中戦争が始まった年-1937年(昭和12年)
- No.42:今度の一万円札の顔 渋沢栄一が亡くなった年-1931年(昭和6年)
- No.43:蟹工船事件・エトロフ丸、信濃丸事件の年-1930年(昭和5年)
- No.44:平成天皇継宮明仁様が生まれた年-1933年(昭和8年)
- No.45:昭和農業恐慌・東北地方で深刻な凶作の年-1934年(昭和9年)
- No.46:国家総動員法が公布・施行された年-1938年(昭和13年)
- No.47:三島由紀夫が割腹自決した年-1970年(昭和45年)
- No.48:マクドナルド第一号店が銀座にオープンした年-1971年(昭和46年)
- No.49:オイルショック・トイレットペーパーが消えた年-1973年(昭和48年)
- No.50:プロ野球のレジェンド長嶋茂雄引退の年-1974年(昭和49年)
- No.51:史上初巨人がまさかの最下位の年-1975年(昭和50年)
- No.52:ロッキード事件に揺れた年-1976年(昭和51年)
- No.53:王貞治がホームラン世界記録を達成した年-1977年(昭和52年)
- No.54:新東京国際空港(現成田国際空港)開港の年-1978年(昭和53年)
- No.55:大学入試センターが発足した年-1977年(昭和52年)
- No.56:インベーダーゲームが大流行した年-1979年(昭和54年)
- No.57:「モスクワオリンピック」ボイコットの年-1980年(昭和55年)
- No.58:学ランを着た「なめ猫」が流行った年-1981年(昭和56年)
- No.59:ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.60:Apple社がMacintoshを発表した年-1984年(昭和59年)