今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.12.5.

 

 

 

 今回は、49年時代を遡り、1971年にタイムスリップ。この年は、マクドナルド第一号店が銀座にオープンした年でした。NASDAQによる証券取引はじまり、NHK総合テレビが全番組カラー化を実施。フジテレビ系列では『ゴールデン洋画劇場』放映開始されたのもこの年でした。60年代後半のいざなぎ景気時代には「カラーテレビ」「クーラー」「自家用車」が新三種の神器と呼ばれ、、企業は次々と新商品を発売し、生活様式の変化が著しい時代。この頃になると年間の出生数が200万人を超え、第二次ベビーブームが到来。団塊世代のジュニア世代が誕生しました。「巨人・大鵬・卵焼き」が子供が好きなものの代名詞と謳われ、若者世代が古い時代を脱ぎ捨て、新しい時代を切り開こうと奮起する勢いのある時代。大衆向けの娯楽が台頭する中、アンダーグラウンドでは演劇や小説、前衛アートなど優れた芸術も生まれました。

 

 その頃、映画は任侠ものが花盛り。高倉健や松方弘樹、梅宮辰夫と行った往年のスターがヒット作を飛ばしていました。若者が牽引する文化の中で「家族」というテーマは、旧態然とした古めかしいものとして、そこにある歪みや形骸化した家族の営みに疑問をぶつける作品が多くみられます。その中で公開されたのが、大島渚監督の「儀式」。全体を通して違和感に満ちた家族を描いています。戦後25年が経ち、戦争によって歪められてしまった日本人の姿を浮き彫りにしています。この年のキネマ旬報第一位に選出され、近年海外でも再評価されている作品です。

 

 主人公の満州男は、満州から命からがら帰国した引揚者。父の実家へ戻った時には父は亡くなっており、一周忌の法要が執り行われていました。家長である祖父は、元軍人。厳格な仕来りを守る旧家の家族は、戦争で追った傷を心に深く刻んで生きる人たちですが、それは普段無いものとして祖父の意に従い暮らしていました。幼少期に一緒に過ごした家族はやがて、大人になりそれぞれの人生を歩み始めるのですが、満州男は長男の息子という立場から家の都合に縛られ、祖父に支配されていきます。家族という繋がりの中にあるのは、冠婚葬祭の時にだけ顔を合わせる人々という希薄な感情。映画では、その感情の源を探して、仄暗い家族の過去が暴かれていきます。

 

 家族の中にあるダブーを炙り出していく、非常に切迫したストーリー展開の映画は、黒いものを黒と言えない見えない圧力に終始圧迫されているような息苦しさがあります。エロスをロジックで制圧しようとする独特の世界観は、大島監督の真骨頂。若い男性が持つ女性への畏れと蔑みの二面性が躊躇なく表現されていて、当時の男性優位社会のあり様を生々しく伝えてきます。最後、照道と律子が共に死を選ぶ理由が私には理解できないのですが、この辺りは時代を知る年長者に聞いてみたい部分です。

 

儀式

DVDパッケージ

公開日:1971年6月5日

上映時間:123分

ジャンル: ドラマ

監督:大島渚

キャスト:河原崎建三,賀来敦子,佐藤慶,中村敦夫

【内容】

桜田満洲男は、親戚の中でも特別な存在であった輝道の死を知らせる電報を受け取り、親戚の律子を伴い、子供の頃過ごした島に帰る。その帰途、満洲男の意識は自分と律子、そして輝道を含む桜田家の一族の数奇な歴史を遡行していく。桜田家は元内務官僚で、一度は戦犯とされながらも復権した当主、一臣の独裁の下にあり、満洲男たちにとって祖父に当たる彼が、何人もの女に生ませた異母兄弟とその子供たちによって、複雑な人間関係が織り成されていた。満洲男は血縁が入り乱れた親戚たちに囲まれて、生活を始める。やがて一臣の強権的支配下にある桜田家にも時代のうねりが押し寄せる……。本作はその年のキネマ旬報のベストワンを獲得しただけにとどまらず、近年海外での再評価も進み、あのテオ・アンゲロプロスが熱烈に愛した作品でもある。

 

●儀式 [DVD] ¥4,228〜

●amazon prime、Youtubeでも視聴できます。

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