今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。


これまでのライブラリー
2020.11.28
今回は、1970年にタイムスリップしてみましょう。ちょうど50年前のこの年。11月25日は、「仮面の告白」「潮騒」など数々の名作を世に送り出し、戯曲家、俳優としても活躍した三島由紀夫が衝撃的な死を遂げた日でした。この日、三島は陸上自衛隊市ケ谷駐屯地東部方面総監部 益田兼利総監を人質にし籠城。バルコニーから檄文を撒き、自衛隊の決起を促す演説をした直後、割腹するという壮絶な死を遂げました。昭和元年生まれの三島は、自身の生涯と昭和の歴史と重ねられ語られることの多い人物で、作品の中ではその時代の持つ問題点を鋭く切り込み、戦後日本の在り方を問うた人でした。
一方、時代は高度成長期の日本では、テレビやラジオなど公共電波が日本全国に普及し、「エメロン」や「マンダム」、ホンダ「Z」や三菱「ギャランGTO」といった若者が憧れる商品を数多く発売して、ますます若者文化が活気付きました。そして、この頃流行っていた映画といえば、東映の任侠映画。高倉健や菅原文太、松方弘樹といったスターが銀幕を彩っていました。この年に公開されたほとんどが任侠系のラインナップ。その中でも、70年は和田アキ子主演の野良猫ロックなど女任侠ものもたくさん公開されました。
そんな任侠最盛期に公開されたのが山田洋次監督の「家族」でした。寅さんの妹役さくらでお馴染みとなった倍賞千恵子の民子シリーズといわれる作品。長崎伊王島という小さな島の炭鉱で働いていた夫が会社の倒産を機に、酪農をするために北海道へ行くことを決めます。小さな子供二人と祖父と共に、長崎から北海道への長い長い旅路を描くロードムービーです。撮影は、道を行く一般の人々の中で行われていて、50年前のリアルな日本人の姿がそこに納められています。今の時代なら飛行機を使えばすぐですが、この時代は列車を乗り継いで行く過酷な旅。長崎の島から船に乗り、北海道へ到着するまでに、様々な苦難を乗り越えた家族にとっては果てしなく遠い道のりでした。
自分の意見は敢えて言わずに家族を想うおじいちゃん。自分の夢を実現しようと奮起するも様々な困難にぶち当たりなんとか状況を打破しようとするお父さん。その中で、子供たちを守り家族の絆を必死で繋ごうと奮闘するお母さん。無邪気に家族の元で遊ぶ子供たち。それぞれが、家族という絆の中で必死に生き抜こうとする切実さが胸を打つ作品です。長崎から北海道まで4日間。家族の運命をガラリと変えてしまった北海道行き。でも最後は、それでも前を向いて行く逞しさが主人公の民子の魅力です。良いことも悪いことも人生の一部。心の拠り所として、家族って欠かせないものだなと強く感じる映画でした。
家族
公開日:1970年10月24日
上映時間:106分
ジャンル: ドラマ
監督:山田洋次
キャスト:倍賞千恵子,井川比佐志,笠智衆,ハナ肇,渥美清
【内容】
山田洋次監督が高度経済成長期の日本を背景に、時代に揺れる家族の姿を描いたロードムービー。伊王島に住む精一とその家族。小さな島で家族5人の生活に限界を感じた精一は、勤め先の倒産を機に北海道へ向かう。“あの頃映画 松竹DVDコレクション”。(「キネマ旬報社」データベースより)
●あの頃映画 「家族」 [DVD] ¥2,037〜
●Youtubeで視聴できます。
目次
- No.1: 騒動頻発の年 1972年(昭和47年)の名作
- No.2: 日本中が沸き立った年 1964年(昭和39年)の名作
- No.3: 終戦から5年後の日本ってこんな感じ 1950年(昭和25年)の名作
- No.4: 昭和の歌姫誕生の年 1949年(昭和24年)の名作
- No.5: 平成の始まりはバブリーな恋愛映画 1989年(平成元年)の名作
- No.6: ジャパニーズホラーの金字塔 1998年(平成10年)の名作
- No.7: 皇太子様ご成婚の年 1993年(平成5年)の名作
- No.8:両陛下ご成婚の年 1959年(昭和34年)の名作
- No.9:10年ひと昔といいますが… 2009年(平成21年)の名作
- No.10:マリリンモンローが謎の死を遂げた年 1962年(昭和37年)の名作
- No.11:若者文化が花開く、神武景気に沸いた年 1956年(昭和31年)の名作
- No.12:アポロ11号が人類初の月面着陸をした年-1969年(昭和44年)
- No.13:サンフランシスコ平和条約が発効された年-1952年(昭和27年)
- No.14:ケネディ大統領が暗殺された年-1963年(昭和38年)
- No.15:バカヤロー発言で衆議院が解散した年-1953年(昭和28年)
- No.16:団塊世代が小学校に上がる年-1954年(昭和29年)
- No.17:ナチス軍・ヒトラーが世界を席巻した年-1940年(昭和15年)
- No.18:日本の運命が変わった年-1941年(昭和16年)
- No.19:東京ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.20:「欲しがりません勝つまでは」が流行った年-1942年(昭和17年)
- No.21:マハトマ・ガンディーが銃弾に倒れた年-1948年(昭和23年)
- No.22:暴動や大規模デモ、暗殺…大事件が多発した年-1968年(昭和43年)
- No.23:第一回紅白歌合戦が放送された年-1951年(昭和26年)
- No.24:東京都の人口が世界第一位になった年-1957年(昭和32年)
- No.25:東京で初めてスモッグ警報が出された年-1965年(昭和40年)
- No.26:東京タワーが竣工した年-1958年(昭和33年)
- No.27:原水爆禁止日本協議会が結成された年-1955年(昭和30年)
- No.28:17ヵ国が独立。脱植民地が進んだアフリカの年-1960年(昭和35年)
- No.29:最初で最後ビートルズが来日した年-1966年(昭和41年)
- No.30:ケネディ大統領が誕生した年-1961年(昭和36年)
- No.31:出生率3.43 昭和最高のベビーブームの年-1947年(昭和22年)
- No.32:昭和天皇の詔書にて人間宣言された年-1946年(昭和21年)
- No.33:日本が敗戦・終戦を迎えた年-1945年(昭和20年)
- No.34:戦局悪化の一途、連合艦隊事実上壊滅の年-1944年(昭和19年)
- No.35:戦争の悲劇。戦時猛獣処分の年-1943年(昭和18年)
- No.36:国民徴用令公布など国民生活激変の年-1939年(昭和14年)
- No.37:満州事変から満州国建国 強い日本があった年-1932年(昭和7年)
- No.38:佐藤栄作が非核三原則を言明した年-1967年(昭和42年)
- No.39:芥川賞・直木賞が設立された年-1935年(昭和10年)
- No.40:クーデター未遂2・26事件が起こった年-1936年(昭和11年)
- No.41:盧溝橋事件に端を発し日中戦争が始まった年-1937年(昭和12年)
- No.42:今度の一万円札の顔 渋沢栄一が亡くなった年-1931年(昭和6年)
- No.43:蟹工船事件・エトロフ丸、信濃丸事件の年-1930年(昭和5年)
- No.44:平成天皇継宮明仁様が生まれた年-1933年(昭和8年)
- No.45:昭和農業恐慌・東北地方で深刻な凶作の年-1934年(昭和9年)
- No.46:国家総動員法が公布・施行された年-1938年(昭和13年)
- No.47:三島由紀夫が割腹自決した年-1970年(昭和45年)
- No.48:マクドナルド第一号店が銀座にオープンした年-1971年(昭和46年)
- No.49:オイルショック・トイレットペーパーが消えた年-1973年(昭和48年)
- No.50:プロ野球のレジェンド長嶋茂雄引退の年-1974年(昭和49年)
- No.51:史上初巨人がまさかの最下位の年-1975年(昭和50年)