今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.10.17.

 

 

 

 今回は、今から87年前。1933年昭和8年へタイムスリップ。この年は、平成天皇が誕生した年。昭和天皇の子女として4人続けて女子誕生後の次期皇位継承者になる男子の誕生ということもあって、国内はお祭りムードに沸きました。そして、北原白秋作詞・中山晋平作曲で奉祝歌「皇太子さま御生れなつた」も作られました。国民が待ちわびたお世継ぎ。皇室の伝統的慣習に基づき、将来の天皇になるべくその後、皇太子明仁親王は満2歳で両親の元を離れ、養育されました。天皇になることが運命付けられた人生の始まり。私たち庶民には想像のつかない世界です。

 

 一方、今回ご紹介する映画は、長屋に暮らす庶民が主人公。小津安二郎監督「出来ごころ」。この年のキネマ旬報第一位のヒット映画です。喜八シリーズ三部作と言われる第一弾。物語の主人公は、一人息子と一緒に長屋で暮らす男やもめの喜八。坂本武演じる喜八は、ビール工場で働く気のいいおじさん。同僚の次郎と飲んだ帰り道、春江という身寄りのない娘と出会い酔った勢いで安請け合いしてしまいます。知り合いの店の女将さんに頼み一晩だけの約束で娘を預けますが、女将さんが娘を気に入り翌日から店で働くことになりました。春江は、気立ても器量も良い娘で、男やもめの喜八はすっかり舞い上がってしまいます。それが、喜八にとって不幸の始まり。喜八がその気になってアタックしても、春江は全く男として見てくれません。挙げ句の果てには、春江が同僚の若くてイケメンの次郎を好きになってしまい、その仲介役を任されてしまいます。そんなある日、喜八の息子富坊が病気になってしまいます。その後、富坊はどうなる?親子は危機を乗り越えられるのか?

 

 小津映画にしては、ハラハラドキドキの展開。当時の老若男女がこぞって観に行った理由がわかります。男女と父子、そして男の友情。様々な関係性が絡み合うストーリー。朝の連続ドラマ小説を観ているような感覚です。そして、この映画の一番の見所はキャスティング。喜八を演じる坂本武が、悲しみを隠して明るく振る舞うコミカルな中年おじさんにピタリとハマり、喜八を惑わす薄幸の美女春江は細面で艶っぽい伏見信子、同僚イケメン次郎役の大日方伝も昨今のイケメン俳優に負けない美男子っぷりです。そして、喜八の息子富坊役の突貫小僧と気のいいかあやんこと女将の飯田蝶子もいい味出しています。

 

 長屋で暮らす人々は、お世辞には裕福とは言えませんが、皆一様に楽しそうなのが魅力です。喜八の周りの人々がなぜか笑顔なのは、喜八が自由で自分らしく生きているから。時にはぶつかりながら生きていく親子の姿にウルウルきてしまいます。父ちゃんも富坊も二人とも悪くない。一生懸命生きてるから怒ったり泣いたりする。そんな命の在り方を感じる作品です。

 

出来ごころ

DVDパッケージ

公開日:1933年9月7日

上映時間:100分

ジャンル: ドラマ

監督:小津安二郎

キャスト:坂本武,大日方伝,伏見信子,突貫小僧

【内容】

世界中の映画人に多大な影響を与えた名匠・小津安二郎監督によるドラマ。坂本武、飯田蝶子、突貫小僧が共演し、池田忠雄が脚本を務めた人情喜劇の傑作『出来ごころ』と『浮草物語』を収録する。2枚組。“あの頃映画 松竹DVDコレクション”。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●あの頃映画 松竹DVDコレクション 「出来ごころ/浮草物語」 ¥3,080〜
※※GYAO!でも視聴できます。

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