今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.9.26.

 

 

 

 今回は、1930年。90年前にタイムスリップ。数年前にリバイバルヒットした小林多喜二の小説『蟹工船』の時代。この年、エトロフ丸と信濃丸で起きた乗組員の虐待事件は、小説さながらの劣悪な労働環境の中で起きた痛ましいものでした。明治維新以降、日本の産業革命は急激に発展しました。資本主義政策によって江戸時代から続いた封建的な制度を撤廃し、欧米の近代技術を次々と取り入れて経済を発展させ、欧米列強と対抗してきました。60年余りの間、インフラ整備に欠かせない鉄鋼産業など重工業から、繊維産業など軽工業へと産業が移り変わりました。大きな工場が建てられて、そこには多くの貧しい農民が働いていました。そうした労働力を低賃金で雇い、安価な製品を販売することで日本は経済と軍備を大きくしていきました。

 

 こうした構図は、産業革命以来現在に到るまで、ほとんど変わっていません。今では、先進国が後進国の労働力を使って同じことが行われています。今も昔も力あるものが、弱い者から搾取する資本主義の闇は消えることがありません。今回ご紹介するのは、そんな社会の歪に落ちてしまった少女のお話。藤森成吉の戯曲を鈴木重吉が脚色・監督した「何が彼女をさうさせたか」。1930年(昭和5年)、帝国キネマ演芸製作の日本の長篇劇映画です。無声映画ではありますが、物語が次々と展開するジェットコースタームービー。一人の少女にこれでもかと襲う不運に「次こそは彼女に幸あれ」と力が入ってしまいます。当時、浅草では異例の5週間続映という記録を作ったほどの大ヒット。急激に変化する社会の中、運命に翻弄される少女に共鳴する人が多かったのことを想像します。

 

 無声映画の時代に、こんなに面白い映画があるとは驚きです。ネタバレしたら、楽しめない映画なので詳しいストーリーは控えますが、映画の主人公すみ子は、器量も良くて頑張り屋の健気な娘。様々な試練も希望を捨てずに頑張ります。行く先々でトラブルに巻き込まれていくすみ子。この時代を生き抜くには相当な精神力が必要ということは確か。それでも頑張るすみ子を応援せずにはいられません。だけど、最後には…。すみ子には気の毒ですが、今の時代に生まれて良かったと、どこか救われたような気分になる映画。今のストレス時代も生きにくいですが、昔がノンストレスかと言えば、全くそうではないのです。むしろ、今よりも我慢しなければいけないことが沢山あります。今の時代に、生きてるだけで丸儲けだなと意識をチューニングできるそんな映画でした。

 

何が彼女をさうさせたか

DVDパッケージ

公開日:1930年2月6日

上映時間:78分

ジャンル: ドラマ

監督:鈴木重吉

キャスト:高津慶子, 藤間林太郎, 小島洋々, 牧英勝

【内容】

異例のロングランを記録した帝国キネマの代表作。貧困に喘ぐ少女・中村すみ子は意地の悪い叔父に預けられ、さらにサーカス、犯罪者の手先、好色漢の餌食と流転し人生の闇へと堕ちていく。彼女が最後に辿り着いたのは…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●何が彼女をそうさせたか クリティカル・エディション [DVD] ¥5,280〜
youtubeでも視聴できます。

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