今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.9.12.

 

 

 

 今回は、1937年(昭和12年)にタイムスリップ。盧溝橋事件が起こったのは、この年の7月7日。豊台に駐屯していた日本軍が盧溝橋東北方の荒蕪地で夜間演習を実施した際に、中国兵が第8中隊に対して実弾を発射しました。これがきっかけで日中戦争に発展していきました。当時、政権を巡る争いが続く中国において、満州国の建国を宣言した日本は中国の内乱に巻き込まれ、第二次世界大戦へとその勢いは加速していきました。そして、日本国内では前年に起きた226事件の判決が下り、国家主義の北一輝、村中孝次、西田税、磯部浅一が処刑されました。日本の国内においても、国家主義という偏った思想が台頭し、政府を支える軍人が益々力を持つ時代となりました。

 

 そして、今回ご紹介する映画は、清水宏監督の「風の中の子供」。坪田譲治氏による、日本の児童文学作品を映画化した作品です。この作品に描かれる子供たちは、大人から受け取った気持ちや言葉をこだまのように繰り返しながら、街の中を駆け巡ります。10人程が連なって街を駆け抜ける姿は、まさに風のようです。主人公は、小さな街に住む二人の兄弟。この兄弟の父親がある日警察に連行されてしまいます。父親が勤める会社で不正を働いたと容疑を掛けられてしまうのですが、そんな大人の事情を知ってか知らずか、どこからともなく子供たちはその事を知ると街中に触れ歩きます。この察する力というのが素晴らしく、大人の行動を具に見て取って自分なりに解釈して、子供の世界の対立に対抗するのです。それにより、大人は翻弄され、時には助けられたりもするのです。

 

 反対に、この作品に登場する大人は、あまり感情を表に出しません。子供には大人が抱える問題を直接言ったりしないのですが、不思議と子供はいろいろな事を理解していきます。どんな状況にあっても、大人は子供に優しく接します。しかし、大人の世界と子供の世界には絶対的な距離が存在しています。ここが今にはない古き良きものだと感じます。この厳しい時代の中、お互いが想い合うが故の優しい距離が大人と子供の間にありました。父親不在の間、この兄弟には様々な試練が訪れますが、兄弟がそれぞれに健気に乗り越えていきます。そして、多くの事を語らない大人の懐の深さや母親の強さと弱さが時々見え隠れします。

 

 今の時代は、科学が発達して子育てやコミュニケーションについて様々なことが言語化されて知識が共有されていますが、この時代には挨拶の仕方や礼儀作法といった型に知恵が詰まっています。差別や人権といった意識が薄い時代ではありますが、この時代の大人の方がより大人らしく感じるのは私だけでしょうか?この映画を観ると、子供は大人を写す鏡であることが実感できます。今の子供がのびのびと幸せに暮らせるように、大人は頑張らないといけないのですね。

 

風の中の子供

DVDパッケージ

公開日:1937年11月11日

上映時間:86分

ジャンル: ドラマ

監督:清水宏

キャスト:河村黎吉, 吉川満子, 坂本武, 岡村文子, 笠智衆

【内容】

小津安二郎らと並び、松竹大船人情劇の基礎を築いた名匠・清水宏監督のドラマ。善太と三平の兄弟は楽しい夏休みを過ごしていたが、父が私文書偽造の嫌疑で捕まり家族は苦境に陥る。家計を支えるため兄弟ふたりは離れ離れに暮らすことになるが…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●あの頃映画 風の中の子供 [DVD] ¥2,000〜
※youtubeでも視聴できます。

目次