今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。


これまでのライブラリー
2020.8.22.
今回は、1935年にタイムスリップ。この年は、芥川賞と直木賞が正式に設立された年。文藝春秋を創設した菊地寛によって、日本の権威ある文学賞を目指して誕生しました。今でこそ、毎年話題になっていますが、設立から20年ほどはメディアに取り上げられることもなくこじんまりとしたものだったそう。しかし、転機となったのは1956年の石原慎太郎「太陽の季節」の受賞でした。「慎太郎ブーム」がきっかけとなり、芥川賞と直木賞が注目されるようになりました。そして、この年には築地市場や有楽座が開場されるなど、昭和の古き良きものの始まりの年でもありました。
そして、今回ご紹介するのは、成瀬巳喜男監督の「妻よ薔薇のやうに」。新生新派のために執筆された中野実の戯曲「二人妻」の映画化作品です。第12回(1935年度)キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・テン第1位に輝いた作品です。原作タイトルの「二人妻」の通り、ストーリーには二人の女房が登場します。夫・俊作10年以上前に家を出て行ったきり、ひたすら待ち続けている古女房は、女流歌人の悦子。プライドが高く、お嬢様気質の悦子は、俊作への想いを句に詠み夫の帰りを待ちわびていました。二人の間には、年頃の娘がいます。ある時、娘が父親を呼び戻そうと愛人お雪の家を尋ねるところから物語が展開していきます。85年も昔の話ですが、中々に刺激的なテーマです。
快活な性格の娘が、母と父との間を取り持とうと奮闘しますが、二人の会話は噛み合わず、距離は縮まりません。現代だったら、馬が合わない夫婦であれば、喧々諤々の大喧嘩に発展しようものですが、この二人はお互いに辛抱強く、自分の意見を通そうとガミガミと怒ったりしないところが時代だなと感じます。そして、久しぶりに娘と父親が話をしていくと、だんだん何故父親が母親の元を去って行ったのかが分かってきます。娘から見てもお雪の方が父親を幸せにしていることが分かり、父親をお雪の元へ返そうと決意するのです。
男と女の話ですので、これが正解というものはないのですが、一緒に暮らす上でお互いを尊重することの大切さを教えてくれます。この映画に限らず、昭和初期の頃の人は、諦めることを上手く使って生きていると毎度感心します。自分の思い通りにならないとしても、それを他人のせいにせずに淡々と受け流す力は見習うべきところだなと思います。そして、この映画の中で一番教訓として得たことは、謝ることの重要性。謝れる人・許せる人が最後は幸せを掴むという展開が流石でした。今とは全く異なる価値観の愛の物語。今のドラマにはない含蓄が溢れています。
妻よ薔薇のやうに
公開日:1935年8月15日
上映時間:74分
ジャンル: ドラマ
監督:成瀬 巳喜男
キャスト:千葉早智子,丸山定夫,英百合子,伊藤智子,堀越節子,藤原釜足
【内容】
女流歌人の悦子は、十年以上前に砂金を求めて山へと去っていった夫・俊作を強く想いながらも追いかけられない。父を慕う歌を詠む母を見て、結婚間近の丸の内OLである娘・君子は夫婦仲を元に戻そうと奔走する。やがて、遠い土地で芸者上がりの愛人・お雪と同棲し子供までもうけていた俊作を母の元に連れ戻してくるが、久しぶりに顔を合わせた夫婦の仲は冷え切っていて…。(C)1935 東宝
●妻よ薔薇のやうに ¥400〜
※amazonプライムビデオで視聴できます。
目次
- No.1: 騒動頻発の年 1972年(昭和47年)の名作
- No.2: 日本中が沸き立った年 1964年(昭和39年)の名作
- No.3: 終戦から5年後の日本ってこんな感じ 1950年(昭和25年)の名作
- No.4: 昭和の歌姫誕生の年 1949年(昭和24年)の名作
- No.5: 平成の始まりはバブリーな恋愛映画 1989年(平成元年)の名作
- No.6: ジャパニーズホラーの金字塔 1998年(平成10年)の名作
- No.7: 皇太子様ご成婚の年 1993年(平成5年)の名作
- No.8:両陛下ご成婚の年 1959年(昭和34年)の名作
- No.9:10年ひと昔といいますが… 2009年(平成21年)の名作
- No.10:マリリンモンローが謎の死を遂げた年 1962年(昭和37年)の名作
- No.11:若者文化が花開く、神武景気に沸いた年 1956年(昭和31年)の名作
- No.12:アポロ11号が人類初の月面着陸をした年-1969年(昭和44年)
- No.13:サンフランシスコ平和条約が発効された年-1952年(昭和27年)
- No.14:ケネディ大統領が暗殺された年-1963年(昭和38年)
- No.15:バカヤロー発言で衆議院が解散した年-1953年(昭和28年)
- No.16:団塊世代が小学校に上がる年-1954年(昭和29年)
- No.17:ナチス軍・ヒトラーが世界を席巻した年-1940年(昭和15年)
- No.18:日本の運命が変わった年-1941年(昭和16年)
- No.19:東京ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.20:「欲しがりません勝つまでは」が流行った年-1942年(昭和17年)
- No.21:マハトマ・ガンディーが銃弾に倒れた年-1948年(昭和23年)
- No.22:暴動や大規模デモ、暗殺…大事件が多発した年-1968年(昭和43年)
- No.23:第一回紅白歌合戦が放送された年-1951年(昭和26年)
- No.24:東京都の人口が世界第一位になった年-1957年(昭和32年)
- No.25:東京で初めてスモッグ警報が出された年-1965年(昭和40年)
- No.26:東京タワーが竣工した年-1958年(昭和33年)
- No.27:原水爆禁止日本協議会が結成された年-1955年(昭和30年)
- No.28:17ヵ国が独立。脱植民地が進んだアフリカの年-1960年(昭和35年)
- No.29:最初で最後ビートルズが来日した年-1966年(昭和41年)
- No.30:ケネディ大統領が誕生した年-1961年(昭和36年)
- No.31:出生率3.43 昭和最高のベビーブームの年-1947年(昭和22年)
- No.32:昭和天皇の詔書にて人間宣言された年-1946年(昭和21年)
- No.33:日本が敗戦・終戦を迎えた年-1945年(昭和20年)
- No.34:戦局悪化の一途、連合艦隊事実上壊滅の年-1944年(昭和19年)
- No.35:戦争の悲劇。戦時猛獣処分の年-1943年(昭和18年)
- No.36:国民徴用令公布など国民生活激変の年-1939年(昭和14年)
- No.37:満州事変から満州国建国 強い日本があった年-1932年(昭和7年)
- No.38:佐藤栄作が非核三原則を言明した年-1967年(昭和42年)
- No.39:芥川賞・直木賞が設立された年-1935年(昭和10年)
- No.40:クーデター未遂2・26事件が起こった年-1936年(昭和11年)
- No.41:盧溝橋事件に端を発し日中戦争が始まった年-1937年(昭和12年)
- No.42:今度の一万円札の顔 渋沢栄一が亡くなった年-1931年(昭和6年)
- No.43:蟹工船事件・エトロフ丸、信濃丸事件の年-1930年(昭和5年)
- No.44:平成天皇継宮明仁様が生まれた年-1933年(昭和8年)
- No.45:昭和農業恐慌・東北地方で深刻な凶作の年-1934年(昭和9年)
- No.46:国家総動員法が公布・施行された年-1938年(昭和13年)
- No.47:三島由紀夫が割腹自決した年-1970年(昭和45年)
- No.48:マクドナルド第一号店が銀座にオープンした年-1971年(昭和46年)
- No.49:オイルショック・トイレットペーパーが消えた年-1973年(昭和48年)
- No.50:プロ野球のレジェンド長嶋茂雄引退の年-1974年(昭和49年)
- No.51:史上初巨人がまさかの最下位の年-1975年(昭和50年)
- No.52:ロッキード事件に揺れた年-1976年(昭和51年)
- No.53:王貞治がホームラン世界記録を達成した年-1977年(昭和52年)
- No.54:新東京国際空港(現成田国際空港)開港の年-1978年(昭和53年)
- No.55:大学入試センターが発足した年-1977年(昭和52年)
- No.56:インベーダーゲームが大流行した年-1979年(昭和54年)
- No.57:「モスクワオリンピック」ボイコットの年-1980年(昭和55年)
- No.58:学ランを着た「なめ猫」が流行った年-1981年(昭和56年)
- No.59:ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.60:Apple社がMacintoshを発表した年-1984年(昭和59年)