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2020.7.11.

 

 

 

 第二次世界大戦中の1943年。ヨーロッパでは、ドイツ・イタリア軍が各地で降伏する中、日本軍も玉砕、撤退を繰り返していました。当時の日本では鬼畜米英とプロバガンダを張り、国民の士気を高めていました。しかし、戦況は悪化し国内にも大規模な空襲の危険が迫り、猛獣脱走対策として日本各地の動物園で戦時猛獣処分が行われました。動物たちは、本来の住処から無理やり連れてこられ、檻に閉じ込められた上に、人間の不都合のために殺されてしまったのです。戦争は人間だけでなく動物の命も奪ってしまいました。当時は戦争が大義名分でしたが、今は経済がそれに変わるものになっています。儲かるから、生活のため、いや経済に貢献するのだと、地球から資源を奪い続けています。昔も今も欲深さはあまり変わりないのかもしれません。地球の言い分をそろそろ聞かないといけない時期かもしれませんね。

 

 さて、今回ご紹介するのは、木下恵介監督の「花咲く港」です。こんな混乱の世にありながら、ペテン師二人の男が主役のコメディ作品。人間の欲と良心の呵責の間で揺れ動く心模様が見どころです。浜松出身の木下恵介監督。浜松ロケ40日、天草ロケ40日、セット20日という撮影をこなし、新人映画監督を対象とした山中貞雄賞を(黒澤明の『姿三四郎』と分け合う形で)受賞という鮮烈デビューを飾った作品です。物語もテンポ良く色々なことが起きるので飽きずに最後まで観られます。出演者も魅力的です。ペテン師役には、大曾根家の朝にも叔父役で出演した小沢栄太郎と当時の2枚目スター上原謙。二人のペテン師が訪ねてくる村の衆には、初代水戸黄門の東野英治郎や小津映画常連の笠智衆、東京物語で老いた母役の東山千栄子など個性的な面々が顔を揃えています。

 

 一通の電報から始まる物語。時が経つにつれ、架空の儲け話に多くの人が集まります。幸か不幸か戦争が始まって村人の熱が帯びてきます。最後には村中の人たちがペテンに掛かってしまうかに思えるハラハラの展開。でも、この映画の眼差しは、上手くやって軽やかに詐欺を働くペテン師ではなく、各々が苦労してお金を稼いだ村人に注がれます。この村人のまっすぐな想いに心を打たれてしまったペテン師の葛藤が滑稽に描かれています。今の時代にはないパターン。当時は、国民全体が我慢を強いられていた状況を考えると、ペテン師とて自由が許されていなかったのかもしれません。時代背景を考えるとほろ苦さを感じますが、当時の娯楽としては最高に愉快な作品。木下作品のエッセンスが詰まった名作です。

 

花咲く港

DVDパッケージ

公開日:1943年7月29日

上映時間:83分

ジャンル: ドラマ

監督: 木下惠介

キャスト:上原謙, 水戸光子, 小沢栄太郎, 東山千栄子

【内容】

名匠・木下惠介の映画初監督作となるコメディドラマ。南九州のとある小島。かつてこの地に造船所を造ろうとして人々に尊敬されていた男の遺児を名乗るふたりの男が島を訪れる。しかし彼らは実はペテン師だった…。主演は上原謙、小澤栄太郎。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●木下惠介生誕100年「花咲く港」 [DVD] ¥3,080〜
※Youtubeでも視聴できます。

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