今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.6.27.

 

 

 

この年の8月15日。日本は歴史的な日を迎えました。日本国民にとって敗戦の日(終戦の日)となり、世界にとっても大きな転換点となりました。それから、75年が経った今。私たちの暮らしは大きく変わりましたが、その始まりがここにあることを忘れてはいけません。大切なものを失い、歯を食いしばり立ち上がった人達の頑張りがあってこそ今の私たちが在ることに、心からの感謝を送りたい気持ちです。そして、当時の日本を元気付けたのが歌でした。「あ〜か〜い〜りんご〜に くちび〜るよ〜せて〜」というメロディは、日本人なら一度は聞いたことがある有名な曲。淡い恋心を想像させる歌詞は、当時の人の心をキュンキュン刺激したようですね。そして、「りんご可愛や」とそこにある小さなものに心を寄せる優しい歌詞に、傷んだ心が救われたのかもしれません。

 

 そして、この歌を大流行させたのが戦後初めて公開された「そよかぜ」という映画。この映画は、18歳の歌が大好きな少女がスターを目指して奮闘するサクセスストーリー。夢を見る少女という未来の存在が、明るい希望の象徴としてキラキラしています。映画館の外は焼け野原だったかもしれない世界に、りんごの歌が明るく響いたのでしょうね。映画では誰も口に出すことはしませんが、「戦争が終わって、良かった!」という気分が詰まっているようです。とにかく、主人公の少女は可愛くハツラツと自分の夢に向かって正直に生きているのが眩しい。主演の並木路子さんの明るい歌声は、「これから良いことありそう!」とポジティブな気持ちにさせてくれます。

 

 戦後というと、何もない不遇の時代というイメージが先行するあまり、この時代に明るい娯楽などないと思ってしまいますが、冒頭の歌のシーンはりんごを片手にスキップしながら歌って踊るアイドル感満載。時々、木の後ろに隠れたりと「この演出、75年前からあるんだ!」とアイドルの普遍性に感動します。この後、美空ひばりさんが人気を博すようになりますが、この映画がアイドルの元祖と言ってもいいのではないでしょうか。いつの時代もみんなが憧れるアイドルがいて、世の中のムードを盛り上げていたのですね。

 

 「りんご」という小さくて可愛らしい存在が、暗いムードの世の中を救うなんて素敵な映画史だと思います。今は「かわいい」は日本の文化として、海外にも紹介されるほど、私たちに根付いた価値観です。その源流をここに発見したような思いです。

 

そよかぜ

DVDパッケージ

公開日:1945年10月11日

上映時間:60分

ジャンル: ドラマ

監督: 佐々木康

キャスト:上原謙,佐野周二,斉藤達雄,高倉彰,並木路子,三浦光子,二葉あき子

【内容】

レビュー劇場の照明係・みち(並木路子)。
今日も舞台でスター歌手が歌う「リンゴの唄」という曲を聞いてうっとりしていた。
そんな歌手志望の少女が、上原謙、佐野周二、斉藤達雄ら扮するバンドのメンバーたちに励まされ、やがて歌手としてデビューするまでを描いている。

 

●そよかぜ~リンゴの唄~ [DVD]  ¥2.095〜
※amazonプライムビデオでも視聴できます。

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