今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.5.16.

 

 

 

 今回は、今から60年前の1960年にタイムスリップ。この年は、フランスのシャルルドゴール大統領の方針転換をきっかけに17ヶ国のアフリカの国が独立を果たし「アフリカの年」と呼ばれました。この年独立したのは、セネガル、モーリタニア、マリ、コートジボワール、ブルキナファソ、トーゴ、ダホメ(現在のベナン)、ニジェール、チャド、中央アフリカ、カメルーン、ガボン、コンゴ、マダガスカル(以上旧フランス領)、ナイジェリア、ソマリア(旧イギリス領)、コンゴ(旧ベルギー領コンゴ。後にザイール)今では、サッカーワールドカップの常連国としてお馴染みの国もあります。
フランスを始めヨーロッパ諸国の植民地化は、国境を作り近代化を齎しましたが、元来のアフリカ民族の暮らしを分断してしまいました。それによって、その後も紛争が絶えない不安定な情勢が続く地域も少なくありません。略奪や支配は、物理的な資源を奪うだけでなく、それまであった世界の調和を根こそぎ奪ってしまう恐ろしいものだと感じます。アフリカはホモ・サピエンスの生まれた人類の故郷とも言える場所。そこには父と母がいて兄弟がいる。それが、人間の生み出した虚構(国家や憲法、貨幣といったルール)で壊されてしまうのは片腕をもぎ取られるような強烈な虚無感を残します。

 

 さて、今回は兄妹にスポットを当てた作品市川崑監督の「おとうと」をご紹介します。60年前の日本の家族の物語。作家の父とリュウマチを患う継母、活発な姉と弟の4人家族。だけど、一人一人の心には、「〇〇すべき」という思い込みが張り付いていて、事あるごとに誰かが誰かを傷つけていきます。継母という立場に気兼ねしリュウマチを患う母親は、敬虔なクリスチャン。その教えに従って正しく生きる事に囚われています。今でいう「毒親」と言えるような振る舞いで、家族を支配しようとしますが、子供たちはそれに反発します。一方、父親は仕事を理由に家族と距離を取り、見て見ぬ振り。その状況に、多感な年頃の弟は愛情に満たされない行き場のない感情を外の世界にぶつけて、度々問題を起こします。その弟の面倒を甲斐甲斐しくみる姉は、家族にとって唯一の明るく健全な存在。しかし、自分を犠牲にする事で家族と折り合いをつけようと、縁談を断り自ら不幸のスパイラルに沈んでいきます。 弟の視点で見たら姉だけが本当の愛を貫き通しているように見えますが、エンディングを迎えるにつれ、姉の愛情も少しずつ歪んたものに見えてくる深みのある作品です。

 

 この作品は、映画初の銀残しといわれる手法で現像され、独特の映像美が楽しめる作品。主演の岸恵子の紅の色がほんのりと色づき、美しさが際立ちます。一方で、田中絹代演じる母親は、ほぼモノクロに近い色で、それぞれが見ている世界観の違いを対比させているようです。この年、市川崑監督は前作の「鍵」でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、その才能を世界に知らしめています。脂ののったこの時期の作品は、「鍵」も含めて必見です。日本の全体主義の中に潜む、個人の中にある苦悩や愛憎といった秘め事が次々と暴かれていく、ゾワゾワと心が揺れる作品です。以前1965年の映画で紹介した東京オリンピックのドキュメンタリー映画の監督は市川崑監督でした。今回の人の心の揺れを描く視点や手法の巧みさを観ると、納得の人選。この作品で市川崑監督のすごさが分かります。

 

おとうと

DVDパッケージ

公開日:1960年11月1日

上映時間:98分

ジャンル: ドラマ

監督: 市川崑

キャスト:岸恵子.川口浩.田中絹代.森雅之.仲谷昇.浜村純.岸田今日子

【内容】

幸田文の原作を水木洋子の脚色で映画化し、高い評価を得た市川崑監督の代表作。作家の父と後妻というコンプレックスを抱える義母の間で不良化していく弟と、彼をかばい愛情を注ぐ姉の美しくも哀しい姉弟愛を描く。“銀残し”という特殊な技法で撮影。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●おとうと[DVD]  新品 ¥3,990〜

※Youtubeでも視聴できます。

DVDパッケージ

公開日:1959年6月23日

上映時間:107分

ジャンル: ドラマ

監督: 市川崑

キャスト:中村鴈治郎(二代目),京 マチ子 ,叶 順子, 仲代達矢

【内容】

谷崎潤一郎の同名小説を市川崑監督が映画化。封建的な家庭に育った貞操観念の強い妻と初老の大学教授の夫。妻の性欲を満たすことができない夫は、若い男を妻に近付け、自らの衰える性欲を掻き立てようとする。“角川シネマコレクション9月度”。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●鍵[DVD] 新品 ¥2,092〜

※Youtubeでも視聴できます。

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