今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.4.18.

 

 

 

 今から62年前の12月。東京タワーが竣工しました。今では東京の観光名所として愛されるシンボルタワー。それから50年余りもの間、テレビやラジオの電波塔として活躍しましたが、2012年の地上デジタル放送の開始に伴い、東京スカイツリーにそのお役目が渡されました。今でも東京のアイコンとして存在感抜群の東京タワー。でも、昭和生まれの若者は、「お上りさん」と呼ばれたくないという塩っぱい想いを抱えて上京していました。「あ!東京ダワーだ!」とはしゃぎそうになるのをグッとこらえて、田舎者とバレないように歯を食いしばるという歪んだ思いも東京タワーには投影されます。今となっては、田舎者万歳!な気分ですが、若い頃は何故あんなに気張っていたのか分かりません。きっと、気取った東京の雰囲気を作ったのは、地方出身の若者が頑張った結果だったのでしょうね。

 

 今回ご紹介するのは、その頃の東京の古き良き文化を存分に感じられる小津安二郎監督の「彼岸花」。戦前から映画を撮り続けてきた監督の初めてのフルカラー作品です。松竹の監督だった小津監督が大映とタッグを組んだ作品。当時の大映スターだった山本富士子をはじめ、有馬稲子や久我美子、佐田啓二、小津作品常連の佐分利信や笠智衆、田中絹代など名優が勢揃いしています。絢爛豪華とも言えるキャストが揃った上に、カラー作品ということで、趣味の良い着物や部屋の設えと小道具などモノクロ作品では味わえない色の魅力が溢れています。当時、赤の発色が良くて採用したというアグフアカラーというドイツ製のフィルム。娘役の有馬稲子の赤いリップや山本富士子演じる京都の姪っ子が着る着物の八掛の赤がとても素敵です。女優を美しく映すと評判だった小津監督。カラーフィルムの特性を使って女性の華やかな魅力を巧みに表現しています。

 

 いつも、家族がテーマの小津作品ですが、今回はお年頃の娘の縁談話を軸に展開されるストーリー。娘の幸せを願う親と決められたレールを歩きたくない娘のすれ違う心模様を軽快なテンポで描く作品です。父親である佐分利信の飄々とした雰囲気と母親の田中絹代の芯のしっかりした凛とした女性のコントラストも見所の一つです。父親として威厳とプライドで頑なな態度の裏側に見せる父の優しさと、娘の幸せという一点を見つめてブレる事のない母の愛情深さがじんわりと沁みる作品です。 そして、その家族を取り巻く様々な人々にあーだこーだと言われるのですが、その人たちに持ちつ持たれつ支えられている人間関係も素敵です。家族でなくても様々な人間関係において大切なものは、相手を思いやる気持ちとその人の心遣い。様々な関係の中に愛があるのだと感じることのできる作品です。

 

彼岸花

DVDパッケージ

公開日:1958年9月7日

上映時間:118分

ジャンル: ドラマ

監督: 小津安二郎

キャスト:佐分利信, 田中絹代, 有馬稲子, 久我美子, 佐田啓二

【内容】

世界中の名監督に影響を与えた小津安二郎監督が初のカラー作品に挑戦したホームドラマ。娘が自分の相談なしに結婚の約束をしていたと知った渉は激怒、ふたりの結婚に反対する。佐分利信、田中絹代が共演。“あの頃映画 松竹DVDコレクション”。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●彼岸花[あの頃映画 松竹DVDコレクション]  新品 ¥1,891〜

※アマゾンプライムでも視聴できます。

目次