今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2020.3.7.

 

 

 

 1951年は、今から69年前。この年にNHKで紅白歌合戦が初めて放送されました。その前身となる番組「紅白音楽試合」が1945年の大晦日に放送されましたが、当時のテレビ業界は、同じ番組を繰り返し放送するなんてナンセンスとされていたので翌年からは「明星祭」や「忘年音楽うらおもて」など毎回タイトルを変えて放送されていました。 しかし、紅白に別れて競い合う合戦スタイルが好評であったため、この年の1月3日のお正月番組としてNHK東京放送会館第1スタジオにて生放送され、今まで続くNHK紅白歌合戦の第一回となりました。1950年11月10日より、週1日・3時間の定期的なテレビ実験放送開始された翌年から続く長寿番組。今では日本の年越しには欠かせない風物詩です。

 

 今回ご紹介するのは、そんな時代の結婚観を描いた小津安二郎監督の「麦秋」。麦の秋と書くこの言葉は、麦が実る頃である初夏を意味します。この映画の主人公である紀子は、企業幹部の秘書として働く28才の独身女性。容姿端麗で明るく気立ての良いお嬢さんですが、当時としては結婚適齢期ギリギリの崖っぷち。多くの作物が実りを迎える秋ではない季節外れの実りをこの女性の物語に重ねたのかなと思うと、お洒落なタイトルです。

 

ある日、紀子の勤め先の上司に縁談を紹介されますが、当の本人ははっきりしません。またとない良縁に家族の方が乗り気です。話を進めようと家族は、あの手この手と仕掛けるのですが、ある日突然に、近所に住む子持ちの男性との結婚をひとりで決めてしまいます。しかも、東京から遠く離れた青森へ転勤することが決まっているというのだから、家族は突然のことに戸惑います。

 

 この時代は、娘の縁談を親が決めるということも珍しくありません。社会の同調圧力に屈しず、不安や困難も含めて受け止める紀子の選択は、今の私でも十分共感できます。よくよく見ると信頼する家族が勧める縁談にも多少の我慢ポイントがあるのです。何度か紹介している小津安二郎監督の映画ですが、そもそも完璧な人生なんてないことを分かった上で、どうしたら幸せに生きられるのかそんなことを教えてくれます。

 

 そして、紀子の決断を受け止める家族の姿に、今にはない親の哀愁や愛情がたっぷりと描かれていて、その世代間の葛藤を両親が優しくゴクリと飲み込む姿にグッときます。良いことも悪いことも家族が全員で立ち向かう姿そのものがとても尊く感じます。楽しい日も辛い日も、そしてなんでもないつまらない日も、毎日隣にいてくれる家族に感謝したくなる映画です。NHK紅白歌合戦のように、毎年毎年同じが良い。時々うんざりすることや途方に暮れることがあっても「私たちは良い方だ、幸せだ」と感謝できることが小津流幸福論の真髄なのかもしれません。

 

麦秋

DVDパッケージ

公開日:1951年10月3日

上映時間:124分

ジャンル: ドラマ

監督: 小津安二郎

キャスト:原節子, 笠智衆, 淡島千景, 三宅邦子, 菅井一郎

【内容】

小津安二郎監督が手掛けた家族ドラマ。間宮家の末娘・紀子は独身生活を謳歌する28歳。彼女に結婚の意思があるのかどうか家族全員がやきもきする中、ある日紀子は妻に先立たれた子持ちの男との結婚を宣言する。“あの頃映画松竹DVDコレクション”。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

●麦秋 [DVD]  新品 ¥2,258〜

※アマゾンプライムでも視聴できます。

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