今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。


これまでのライブラリー
2020.1.18.
日本人にとってお正月は、 年の始まりを祝う大切な日。年が明ける前までに、すす払いをして場を清め玄関にお飾りを付ける。家の中には、家内安全を願い、輪〆や鏡餅などを願いを込めて飾ります。今でもお正月は、家族総出での大掃除に始まり、家族が集まり食卓を囲う特別な日。独立した子供たちも家族で里帰りする人も多いのではないでしょうか?しかし、そんな大勢で過ごす賑やかなお正月もあれば、一人静かに過ごすお正月もあります。家族の形は、人それぞれに違うもの。幸せの形も人の数だけあるのです。ある形が幸せだと決めつけてしまうと、幸せな人と不幸せな人を作ってしまって良くないなと最近思います。「普通は…」と常識人ぶってしまう自分を振り返ってひとり反省することがしばしばです。
今回、ご紹介するのは小津安二郎監督の「父ありき」。妻に先立たれた父と息子のお話です。笠智衆が演じる中学教師の父には、小学生の息子がいます。しかし、学校の遠足で起きた事故をきっかけに父は教師を辞め、生まれ故郷に息子と帰ることを決めます。そして、息子は寄宿舎へ、父は仕事に専念する日々へと親子は別々に暮らすことになりました。息子にとっては、唯一の肉親である父と離れて暮らすのはとても辛く淋しいものでした。しかし、歯を食いしばって、勉強に励みます。父は、父親の責任を果たすために一生懸命に働き、息子を大学へ進学させました。その後、息子はかつての父のように中学教師になりましたが、いつか父と一緒に暮らしたいという想いを募らせます。しかし、その願いがようやく叶ったと思ったら……。
お互いに一途に想い続ける親子の気持ちが、真っ直ぐに表現された愛情溢れる物語です。息子にしてみたら、よっぽど不安で淋しかっただろうに、良くぞ腐らずに育ったものだと感心すると同時に、一緒に暮らすことが親子関係を作るすべてではないことに気付き、愛情とはなんなのかということを考えさせられます。結局、父の敷いたレールに乗って人生を歩む息子の姿は、今を生きる私の感覚からすると「それでいいの?」と疑問符がつく部分もあるのですが、昔の父親というものはそういうものだったのかと、帝国主義にあった日本人の考え方の違いを感じる部分もたくさんあります。しかし、それ以上に父親の息子に対する愛情や息子が父親に感じている尊敬の念が胸を打つ作品です。父と息子の親子関係は時に反発しあったり、照れ臭くて話せなかったりするものですが、大切な絆がきちんと描かれた優しい眼差しを感じることができる秀作です。
作品は、大正から昭和初期の時代設定だそうですが、父親の在り方の変化にも注目して観ると面白い発見があるかもしれません。
父ありき
公開日:1942年4月1日
上映時間:94分
ジャンル: ドラマ
監督: 小津安二郎
キャスト:笠智衆, 佐野周二, 津田晴彦, 佐分利信, 坂本武
【内容】
小津安二郎監督が唯一、戦時下に撮り上げた作品。男手ひとつで育て、その後別々に暮らさねばならなくなった地方の中学教師である父と、成長してやはり別の地方で教師になった息子との深い哀歓を描く。“あの頃映画 松竹DVDコレクション”。(「キネマ旬報社」データベースより)
●父ありき [DVD] 新品 ¥2,192〜
※アマゾンプライムでも視聴できます。
目次
- No.1: 騒動頻発の年 1972年(昭和47年)の名作
- No.2: 日本中が沸き立った年 1964年(昭和39年)の名作
- No.3: 終戦から5年後の日本ってこんな感じ 1950年(昭和25年)の名作
- No.4: 昭和の歌姫誕生の年 1949年(昭和24年)の名作
- No.5: 平成の始まりはバブリーな恋愛映画 1989年(平成元年)の名作
- No.6: ジャパニーズホラーの金字塔 1998年(平成10年)の名作
- No.7: 皇太子様ご成婚の年 1993年(平成5年)の名作
- No.8:両陛下ご成婚の年 1959年(昭和34年)の名作
- No.9:10年ひと昔といいますが… 2009年(平成21年)の名作
- No.10:マリリンモンローが謎の死を遂げた年 1962年(昭和37年)の名作
- No.11:若者文化が花開く、神武景気に沸いた年 1956年(昭和31年)の名作
- No.12:アポロ11号が人類初の月面着陸をした年-1969年(昭和44年)
- No.13:サンフランシスコ平和条約が発効された年-1952年(昭和27年)
- No.14:ケネディ大統領が暗殺された年-1963年(昭和38年)
- No.15:バカヤロー発言で衆議院が解散した年-1953年(昭和28年)
- No.16:団塊世代が小学校に上がる年-1954年(昭和29年)
- No.17:ナチス軍・ヒトラーが世界を席巻した年-1940年(昭和15年)
- No.18:日本の運命が変わった年-1941年(昭和16年)
- No.19:東京ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.20:「欲しがりません勝つまでは」が流行った年-1942年(昭和17年)
- No.21:マハトマ・ガンディーが銃弾に倒れた年-1948年(昭和23年)
- No.22:暴動や大規模デモ、暗殺…大事件が多発した年-1968年(昭和43年)
- No.23:第一回紅白歌合戦が放送された年-1951年(昭和26年)
- No.24:東京都の人口が世界第一位になった年-1957年(昭和32年)
- No.25:東京で初めてスモッグ警報が出された年-1965年(昭和40年)
- No.26:東京タワーが竣工した年-1958年(昭和33年)
- No.27:原水爆禁止日本協議会が結成された年-1955年(昭和30年)
- No.28:17ヵ国が独立。脱植民地が進んだアフリカの年-1960年(昭和35年)
- No.29:最初で最後ビートルズが来日した年-1966年(昭和41年)
- No.30:ケネディ大統領が誕生した年-1961年(昭和36年)
- No.31:出生率3.43 昭和最高のベビーブームの年-1947年(昭和22年)
- No.32:昭和天皇の詔書にて人間宣言された年-1946年(昭和21年)
- No.33:日本が敗戦・終戦を迎えた年-1945年(昭和20年)
- No.34:戦局悪化の一途、連合艦隊事実上壊滅の年-1944年(昭和19年)
- No.35:戦争の悲劇。戦時猛獣処分の年-1943年(昭和18年)
- No.36:国民徴用令公布など国民生活激変の年-1939年(昭和14年)
- No.37:満州事変から満州国建国 強い日本があった年-1932年(昭和7年)
- No.38:佐藤栄作が非核三原則を言明した年-1967年(昭和42年)
- No.39:芥川賞・直木賞が設立された年-1935年(昭和10年)
- No.40:クーデター未遂2・26事件が起こった年-1936年(昭和11年)
- No.41:盧溝橋事件に端を発し日中戦争が始まった年-1937年(昭和12年)
- No.42:今度の一万円札の顔 渋沢栄一が亡くなった年-1931年(昭和6年)
- No.43:蟹工船事件・エトロフ丸、信濃丸事件の年-1930年(昭和5年)
- No.44:平成天皇継宮明仁様が生まれた年-1933年(昭和8年)
- No.45:昭和農業恐慌・東北地方で深刻な凶作の年-1934年(昭和9年)
- No.46:国家総動員法が公布・施行された年-1938年(昭和13年)
- No.47:三島由紀夫が割腹自決した年-1970年(昭和45年)
- No.48:マクドナルド第一号店が銀座にオープンした年-1971年(昭和46年)
- No.49:オイルショック・トイレットペーパーが消えた年-1973年(昭和48年)
- No.50:プロ野球のレジェンド長嶋茂雄引退の年-1974年(昭和49年)
- No.51:史上初巨人がまさかの最下位の年-1975年(昭和50年)
- No.52:ロッキード事件に揺れた年-1976年(昭和51年)
- No.53:王貞治がホームラン世界記録を達成した年-1977年(昭和52年)
- No.54:新東京国際空港(現成田国際空港)開港の年-1978年(昭和53年)
- No.55:大学入試センターが発足した年-1977年(昭和52年)
- No.56:インベーダーゲームが大流行した年-1979年(昭和54年)
- No.57:「モスクワオリンピック」ボイコットの年-1980年(昭和55年)
- No.58:学ランを着た「なめ猫」が流行った年-1981年(昭和56年)
- No.59:ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.60:Apple社がMacintoshを発表した年-1984年(昭和59年)