今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
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ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2019.9.21

 

 

 

 1963年11月22日。テキサス州を遊説中のケネディ大統領が暗殺させる事件がありました。その時の映像は度々テレビでも放送され、世界中に衝撃を与えました。犯人として逮捕されたリー・ハーヴェイ・オズワルドは、二日後にダラス警察署で射殺されており、動機や共犯者の有無など真相は闇の中。陰謀説など様々な憶測が飛び交い、未だに議論はつきません。

 

 一方、日本はというと高度成長期の真っ只中にあり、翌年にオリンピックを控え国内の景気は活気にあふれていました。アイビールックやヒッピー、サイケなど様々なファッションに身を包んだ若者が闊歩していた時代。その中でもVANというブランドが大人気で、アイビーファッションの発信元となり、みゆき族と呼ばれる若者が出現しました。アイビーファッションは、もともとアメリカの大学のフットボール連盟の学生が着ていたファッション。ボタンダウンのシャツに細いパンツ、その上にはボックス型のジャケットを羽織るという出で立ちは、今でも定番のスタイルです。

 

 ファッションにも関心が高まり、社会構造も第一次産業から第二次産業へと経済の中心が移り変わる中、発表されたのが「天国と地獄」。黒澤映画というと七人の侍や羅生門など骨太な時代劇のイメージが強いのですが、60年には黒澤プロダクションを立ち上げ、現代劇にも積極的に取り組んだ時期。その中で「天国と地獄」は、三船敏郎とタッグを組んだ現代劇です。主人公の権藤は、ナショナル・シューズという靴メーカーの重役という設定。企業の権力闘争の渦中にいる主人公の周りは男性ばかり。今の時代なら、大企業とはいえ女性物のパンプスなどを扱う企業なら幹部に女性がいて然るべきところですが、当時の企業は男性社会だったんだとしみじみ時代を感じます。

 

 現代劇とはいえ、黒澤映画の骨太な映像は流石のクオリティ。ストーリーの展開も冒頭からピンと緊張感が漂い目が離せません。最近のサスペンスのような説明的なセリフはあまりないのに、二時間以上の長尺があっという間です。それも黒澤監督が紡ぎ出す画力(えぢから)といえます。天国と地獄のタイトルは、主人公が丘の上に豪邸を構える裕福な暮らしから一転して、窮地に立たされるというストーリーに相応しいのですが、その裏には高度成長期の急激な社会変化に対応できない人々との社会的格差が描かれており、そこに映画の底力を感じる名作です。警察の捜査手法も今とは違い、足で稼ぐ捜査。じわりじわりと犯人に近づいていくスリリングな展開。女子的目線では、陣頭指揮を取る警部役の仲代達矢さんがとても素敵です。

 

天国と地獄

天国と地獄DVDパッケージ

公開日:1963年3月1日

上映時間:143分

ジャンル: サスペンス

監督:黒澤明

キャスト: 三船敏郎, 香川京子, 江木俊夫, 佐田豊

【内容】

疾走する列車内で繰り広げらる誘拐犯と警察捜査陣の息つまる対決を描いた黒澤明監督が主演に三船敏郎を迎えて贈るサスペンス・ムービー。共演は山崎努、香川京子、仲代達矢ほか。(「Oricon」データベースより)

 

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