今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。


これまでのライブラリー
2019.9.7
1952年の日本では、前年の1951年9月8日に調印されたサンフランシスコ平和条約が1952年4月28日に発効され、この条約により連合国による占領は終わり日本は主権を回復しました。終戦から7年目。街の再建が進み、硬貨で使える公衆電話が登場し、街のインフラが整いつつありました。また、現在も残る50局程の民放AM放送局のほとんどが1952年前後に開局され、生活の中にラジオという娯楽も生まれました。ようやく人々の暮らしも少しずつ豊かさを取り戻しつつある、そんな雰囲気の時代だったでしょう。
当時、日本を代表する映画監督のひとり小津安二郎監督。戦時中、検閲によって却下されていた脚本をあらためて取り上げた作品が「お茶漬けの味」でした。家族をテーマに作品を撮り続けた彼がこの映画でテーマにしたのが「夫婦」。主人公は、裕福で何一つ不自由のなく暮らす中年夫婦。長いこと夫婦を続けていれば、誰しも思い当たる夫婦間のすれ違いをユーモアを交えながら描いています。
今とは違うのは、結婚するのが当たり前の時代背景。1950年代は、約98.5%の人が結婚していた時代です。今のような恋愛結婚ではなく、お見合い結婚が多かった時代。親や親戚の勧めで、本人の意思とは関係なく結婚することも珍しくなかったのですから、当然、相性の合わないカップルがいてもおかしくありません。時には、嫌でもその家に仕えることが優先され、その状況の中で、いかにやり過ごすかということが女性の生き方でした。
しかしながら、この映画で描かれている妻の妙子は、なかなかの強情者。東京のお嬢さま育ちの妙子と長野の田舎育ちの茂吉の違いに、不満爆発の日々。夫のことを「鈍感」と言い放ち、池の鯉に例えて言いたい放題です。一方、茂吉は毎日真面目に働き、質素な暮らしを好み、家では無口な男性。妙子の奔放ぶりも見て見ぬ振りを決め込んで、二人の距離は離れていくばかり。そんな折、茂吉の南米転勤が決まり、直ぐに日本を離れることになるのですが、妙子は家に帰ってきません。そして、そのまま会えなくなってしまう筈だった夜に、食べたお茶漬け。それが、夫婦の絆をぐっと引き寄せることになります。
小津監督が描く家族のシーンには、食事シーンが多く出てきます。普段何気なくしている食事も、誰かと共にすることでかけがえのないものになることを監督は知っていたのでしょう。生活を共にする家族。それも血縁関係のない夫婦という関係に焦点を当てたこの作品。1952年の興行成績第2位。この時代の人にもっとも刺さった夫婦のドラマ。今の時代にも通じる大切なものを伝えてくれます。
お茶漬の味
公開日:1952年10月1日
上映時間:116分
ジャンル: ドラマ
監督:小津安二郎
キャスト: 佐分利信, 木暮三千代, 鶴田浩二, 笠智衆, 淡島千景
【内容】
佐竹妙子は有閑マダム。真面目一方の夫・茂吉をばかにしている。姪の節子が見合いの席から逃げてきたと聞き、叱る妙子。節子は「叔母さんの家庭は見合い結婚なので冷たい」と言う。感情がすれ違っていた佐竹夫婦だったが、茂吉の海外出張を機に和解する。 (「キネマ旬報社」データベースより)
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目次
- No.1: 騒動頻発の年 1972年(昭和47年)の名作
- No.2: 日本中が沸き立った年 1964年(昭和39年)の名作
- No.3: 終戦から5年後の日本ってこんな感じ 1950年(昭和25年)の名作
- No.4: 昭和の歌姫誕生の年 1949年(昭和24年)の名作
- No.5: 平成の始まりはバブリーな恋愛映画 1989年(平成元年)の名作
- No.6: ジャパニーズホラーの金字塔 1998年(平成10年)の名作
- No.7: 皇太子様ご成婚の年 1993年(平成5年)の名作
- No.8:両陛下ご成婚の年 1959年(昭和34年)の名作
- No.9:10年ひと昔といいますが… 2009年(平成21年)の名作
- No.10:マリリンモンローが謎の死を遂げた年 1962年(昭和37年)の名作
- No.11:若者文化が花開く、神武景気に沸いた年 1956年(昭和31年)の名作
- No.12:アポロ11号が人類初の月面着陸をした年-1969年(昭和44年)
- No.13:サンフランシスコ平和条約が発効された年-1952年(昭和27年)
- No.14:ケネディ大統領が暗殺された年-1963年(昭和38年)
- No.15:バカヤロー発言で衆議院が解散した年-1953年(昭和28年)
- No.16:団塊世代が小学校に上がる年-1954年(昭和29年)
- No.17:ナチス軍・ヒトラーが世界を席巻した年-1940年(昭和15年)
- No.18:日本の運命が変わった年-1941年(昭和16年)
- No.19:東京ディズニーランドが開園した年-1983年(昭和58年)
- No.20:「欲しがりません勝つまでは」が流行った年-1942年(昭和17年)
- No.21:マハトマ・ガンディーが銃弾に倒れた年-1948年(昭和23年)
- No.22:暴動や大規模デモ、暗殺…大事件が多発した年-1968年(昭和43年)
- No.23:第一回紅白歌合戦が放送された年-1951年(昭和26年)
- No.24:東京都の人口が世界第一位になった年-1957年(昭和32年)
- No.25:東京で初めてスモッグ警報が出された年-1965年(昭和40年)
- No.26:東京タワーが竣工した年-1958年(昭和33年)
- No.27:原水爆禁止日本協議会が結成された年-1955年(昭和30年)
- No.28:17ヵ国が独立。脱植民地が進んだアフリカの年-1960年(昭和35年)
- No.29:最初で最後ビートルズが来日した年-1966年(昭和41年)
- No.30:ケネディ大統領が誕生した年-1961年(昭和36年)
- No.31:出生率3.43 昭和最高のベビーブームの年-1947年(昭和22年)
- No.32:昭和天皇の詔書にて人間宣言された年-1946年(昭和21年)
- No.33:日本が敗戦・終戦を迎えた年-1945年(昭和20年)
- No.34:戦局悪化の一途、連合艦隊事実上壊滅の年-1944年(昭和19年)
- No.35:戦争の悲劇。戦時猛獣処分の年-1943年(昭和18年)
- No.36:国民徴用令公布など国民生活激変の年-1939年(昭和14年)
- No.37:満州事変から満州国建国 強い日本があった年-1932年(昭和7年)
- No.38:佐藤栄作が非核三原則を言明した年-1967年(昭和42年)
- No.39:芥川賞・直木賞が設立された年-1935年(昭和10年)
- No.40:クーデター未遂2・26事件が起こった年-1936年(昭和11年)
- No.41:盧溝橋事件に端を発し日中戦争が始まった年-1937年(昭和12年)
- No.42:今度の一万円札の顔 渋沢栄一が亡くなった年-1931年(昭和6年)
- No.43:蟹工船事件・エトロフ丸、信濃丸事件の年-1930年(昭和5年)
- No.44:平成天皇継宮明仁様が生まれた年-1933年(昭和8年)
- No.45:昭和農業恐慌・東北地方で深刻な凶作の年-1934年(昭和9年)
- No.46:国家総動員法が公布・施行された年-1938年(昭和13年)
- No.47:三島由紀夫が割腹自決した年-1970年(昭和45年)
- No.48:マクドナルド第一号店が銀座にオープンした年-1971年(昭和46年)
- No.49:オイルショック・トイレットペーパーが消えた年-1973年(昭和48年)
- No.50:プロ野球のレジェンド長嶋茂雄引退の年-1974年(昭和49年)
- No.51:史上初巨人がまさかの最下位の年-1975年(昭和50年)