今も昔も、映画はみんなが楽しめる身近な娯楽。
映画が誕生して120年余り。
私たちのおじいちゃんおばあちゃん、
あるいは、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんだって
映画を楽しんできました。
ひいおじいちゃんが観ていたかもしれない100年前の映画や
お父さんの青春時代を彩っただろう50年前の映画など
公開年ごとにランダムに紹介していきます。

これまでのライブラリー

2019.8.10

 

 第二次世界大戦からおよそ10年。戦後復興期から一番最初に訪れた好景気が神武景気でした。1956年の経済白書では、「もはや戦後ではない」と謳われました。終戦直後から続いた物価上昇が落ち着き、お米の豊作が続いたことから、食べ物や物がない非常事態から、国民が生活に落ち着きを取り戻した時期でした。また、この時期には「三種の神器」と言われたテレビ(白黒)・洗濯機・冷蔵庫の家庭電化製品ブームが始まり、大量生産大量消費の時代の幕開けとなりました。

 

 この好景気により、国民の生活水準が向上し、人々が娯楽を求め、街には映画館が次々と建てられ、池袋に西武や東武、三越などデパートが乱立するようになったのもこの頃でした。街には娯楽と最新ファッションや家電を求める人であふれ、これから始まるであろう新しい時代に、若者は期待に胸を膨らませていました。一方で、戦前からの古い考え方との対立が顕在化し、アメリカ文化に憧れ、新しい価値観をもつ若者たちが「太陽族」と呼ばれ世間から注目を浴びました。

 

 そのブームの火付け役となったのが、芥川賞を受賞した石原慎太郎の短編小説「太陽の季節」。若者たちの奔放な生き様を描いた作品です。しかし、当時はあまりにも過激な内容に賛否両論あり、評価は別れたといいます。今、観ても倫理観を逸脱した過激なストーリー。今の言葉で言えば、ゲスな男しか出てこないのでありますが、それを観せるストーリーの巧みさは流石という内容です。

 

 そして、この映画は、往年のスターが多く出演している映画。昭和の大スター石原裕次郎が初めて映画出演した作品でもあります。後にファンファン大佐の愛称で人気だった岡田真澄や芸能界のおしどり夫婦長門裕之と南田洋子。さらには、元東京都知事でもある作者の石原慎太郎本人も出演しています。主演は、長門裕之と南田洋子ですが、脇役の石原裕次郎がキラキラしすぎていて、ちょっと気が逸れてしまうのが玉に瑕。この時すでに石原裕次郎のスター性を感じることができます。後に姉妹篇として、「狂った果実」という作品で、石原裕次郎主演の映画が制作されています。私の個人的な意見ですが、映画としては、「太陽の季節」の方が断然魅力的。

 

  作品は、いわゆる上流家庭のおぼっちゃまとお嬢さまが繰り広げる恋愛ストーリー。その優雅で過激な奔放ぶりは当時の日本の勢いそのものなのかもしれません。政治家として、様々な発言をして世間をざわつかせていた石原慎太郎氏ですが、作家時代から強い発信力で波風立てるのはお得意だったようです。激動の時代を生きた今の慎太郎世代の価値観の一片を垣間見ることができる作品。主演の南田洋子さんのスタイリッシュなファッションも見所の一つです。63年前の暑い夏を感じてみてください。

 

太陽の季節

太陽の季節DVDパッケージ画像

公開日:1956年5月17日

上映時間:89分

ジャンル: ドラマ

監督:古川卓巳

キャスト: 長門裕之, 南田洋子, 石原裕次郎, 岡田真澄

【内容】

石原慎太郎のセンセーショナルな原作を、長門裕之と南田洋子共演で映画化した青春ドラマ。ハイスクールの学生・津川竜哉は、拳闘に興味を持つタフな若者だった。ある日、彼は遊び仲間たちと銀座に繰り出し、帽子屋から出てきた英子らを誘うが…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

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※Huluでも視聴出来ます。

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