誰しもがこの世界とお別れする時が来る。
本当は、当たり前のことなのだけど、
普段はあまり身近に感じることはないかもしれません。
あなただったら、どんな姿で残されたあの人と一緒に居たいと思いますか?
本人にとっても、家族にとっても、納得できる
最高の遺影写真を撮りたい!
家族の一日を追いかけたルポルタージュです。

カメラマン
PhotoLeGe
小栗啓吾

病院の介護士として勤務しながら『介護写真家』として撮影を行なっている。 イキイキとした介護士の表情を写真に切り取ることで、介護現場での心の触れ合いを多くの人に知ってもらうことを目的に様々な活動をしている。また、出張で遺影撮影をしながら介護・終活相談も行なっている。

スタイリスト
JIBUN STYLE LABO代表
古屋ヨウコ

人を笑顔に輝かせることをミッションに、他人との比較ではなく、自分らしさを大切にした『JIBUN STYLE』にこだわり『最高に輝くJIBUN/自分』を装いで表現するスタイリングアドバイスをはじめ、個人や企業、店舗の価値を高めるプロデュース、ブランディングサポート事業等、活動のフィールドを広げている。

ヘアメイク
綺羅化粧品浜松
野田健

パウダーメイクの機能性に感動して、板前から綺羅化粧品へ転職。現在はメイクアップ&小顔エステ小顔エステトレーナーを担当。「人を綺麗に見せる」を信念に日々技術に磨きをかけている。

12月1日

第2回 「KEIKOのYEAH!」・・・1番自分らしい姿で

恵子さんが撮影スポットに選んだのは、ご自宅から歩いて5分足らずの所にある神明宮。残暑はまだまだ厳しいものの、神社へ歩いて向かう道すがら、青い穂をつけたイヌタデや時折そよぐ涼風に秋の訪れを感じます。

 

神明宮は、恵子さんにとって子どもの頃からなじみの深い場所。参道の杉並木、ジャリジャリと足音が響く砂利道、樹齢約230年のヒノキのご神木…昔とあまり変わらない風景が広がります。

「小学生の頃、毎朝この神社に集合して、みんなで集団登校をしたの。たしかこの辺りにカブトムシがいっぱい来る樹があったはず…」と、杉並木をキョロキョロ見回す恵子さん。

3姉妹の長女で、子どもの頃からお茶目で快活だった恵子さんは、田園地帯ののどかな環境に育ち、子どもの頃は野畑を駆け回って遊ぶのが日課でした。まだ青い栗を拾って、生でボリボリかじったこともある程のお転婆娘だったそうです。

カメラマンを務めるご長男の啓吾さんは、境内を何度も行ったり来たりして、撮影スポットを念入りに確認。一方、ご主人の安夫さんは、待っている間にみんなが蚊に刺されてはいけないからと、家までひとっ走りして虫よけスプレーを取りに行くことに。日頃マラソンで鍛えている健脚の持ち主とあって、あっという間に神社に戻り、スプレーを手渡してくれました。

 

さて、撮影スポットも決まり、いよいよロケ撮影がスタート。

拝殿を背景に立つ恵子さんに、啓吾さんが声をかけます。

「手を腰にあててポーズして」、「もっと笑って」、「いいね、いいね」、「おいしいものを食べてる時みたいに笑って」…

恵子さんは、やや緊張した表情。「みんなが見てるから恥ずかしいなぁ」と、はにかんだ笑顔を見せます。暑さで顔に汗がにじむと、メイクさんがさっとお化粧を直してくれます。スタイリストさんがブラウスの襟ぐりを整えたり、すそをふんわりさせたりするだけで、ファッション雑誌のモデルのように着こなしが格好良くキマるから不思議です。

プロのモデルさん気分を楽しむ恵子さんを、杉並木の木陰からそっと見守る安夫さん。静かな境内にこだまするシャッター音。啓吾さんの声かけのおかげで、最初は緊張気味だった恵子さんの表情も徐々に和らぎ、いい笑顔が出るようになりました。

風に髪をなびかせたショットや、少し恥ずかしそうに首をかしげるショット、モデルポーズをキメたショット…撮影後に画像をカメラでチェックして、恵子さんも満足気です。

 

神社での撮影を終えて自宅に戻ると、今度はドレスに着替えてリビングのピアノの前で撮影。

独身時代に幼稚園の保育士をしていた恵子さんは、もちろんピアノも相応の腕前。3人のお子さんたちも子ども時代にピアノを習っていたそうです。

音楽好きの恵子さんは「コールリーベ合唱」という浜北区内の合唱団に所属して、今年で34年目になります。

「最近は浜松市内の介護施設や老人ホームなどに慰問に行くことにやりがいを感じます。慰問先で『ふるさと』の歌を唄うと、お年寄りの方々がみんな泣き出すの。帰り際に手を握って離さないお年寄りもいて、こんなに喜んでくれるならできる限り続けたいって思う」と恵子さん。

今回選んだドレスも、慰問の際によく着るお気に入りの1着。スイトピーのように可憐なコーラルピンクのシフォンドレスが、色白で目鼻立ちのはっきりした恵子さんによく似合います。

モデル役にすっかり慣れてきた恵子さん。自宅での撮影では、カメラに向かって余裕の笑顔を見せます。安夫さんも、「僕も一応撮っておくかな」と照れ臭そうに言いながら、恵子さんのドレス姿をスマホでパチリ。

なごやかな雰囲気の中、撮影がスムーズに進んでいきました。

(次回へ続く)