いつか、我が家にもやってくる「介護」という時間。
体験してみないとなかなか実感を持てないけれど、
どんな様子なのか知りたくないですか?
介護のカタチは十人十色。
家族の状況やその時の選択によっても
いろいろな道があることを知り、
自分と似たケースから学ベる
介護の事例集をお届けします。

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2019.1.19

第5話 Sさんの場合

【ご家族構成】

夫83歳、妻(Sさん)75歳。夫婦ふたりでの生活で、子どもはいない。夫は国語の元教師。その夫が認知症を患いデイサービスとショートステイを利用中。Sさんも週1回、半日のリハビリのデイサービスを利用中。

 

 

 

今回のインタビューでは、担当ケアマネSさんが同席してくれました

 

ご主人の認知症はいつ頃から始まったのですか。

 

Sさん「何年ぐらい前かな。最初はね、今日は何日?って私に何回も聞いたの。だもんで、おかしいなあ、一度みてもらおうということになって、テストやったり、MRIで調べてもらったりして。それからお医者さんに認知症のお薬を頂いて飲むようになりました」

 

ケアマネージャー「平成24年に物忘れをするようになって、認知症と診断されて服薬を開始しているのですけれど、平成26年に病院は嫌だといって行かなくなっちゃったんですよね」

 

Sさん「そうそう、そうでした。何ともないから(病院には)行かないって言って。それでお薬やめちゃったわけだよね。それでもトイレも自分で行くし、着替えもできるし、普通の生活はまだできていました」

「でも、いつだったかは忘れたんですけど、友達と会う約束してね、バスで行ったと思っていたら家に帰って来ちゃったのね。『あなた今日会議があるっていったじゃないの?』って聞いたら、『そうじゃないよ』って……」

 

その後、約束の相手の方から何か連絡が来たりとか?

Sさん「電話が来ました。『待ってても来ないけど、どっか探しに行かなきゃいけないかなあって思ってた』って。そういう事があってから、おかしいな、物忘れが進んじゃったのかなと思って、ひとりでは外に行かないよう気を付けるようになりました」

 

ケアマネージャー「そのあと平成28年10月の出来事が要支援につながる大きなきっかけになりましたね」

駐車場のトラブルのことですね。

Sさん「家から出てすぐそこの角のところに(主人が)立っててね」

 

ケアマネージャー「お隣のお店の駐車場に駐めてある車の駐め方がちょっと気に入らなかったというか。それにカッと頭にきて興奮してしまったようですね」

 

Sさん「そうね、それも何度かね。お店だからお客さんもいるしね。私が気がついて連れて帰ってくればよかったのだけれど」

 

ケアマネージャー「おひとりで外に出られてて、一度はお店の中まで入って大きな声で注意した時には警察を呼ばれてしまって。でも、その事を次の日には忘れてる状態だったので、結局繰り返してしまったんですよね」

 

 

お店の方ともお話しされましたか。

 

ケアマネージャー「施設に入れてくれとか、住まいを変えてくれと言われてしまって、とても悩まれたと思います」

 

Sさん「引っ越してくれとまで言われてね、私もまさかそんなことってね」

 

すぐ近所でそのようなことになっていたなんて、びっくりしましたね。

 

ケアマネージャー「これをきっかけに相談機関の地域包括支援センターが入るようになりました。病院に行く受診は(ご主人の)拒否が強かったので、介護保険の申請のために訪問診療を依頼し、保険の申請に至りました。要介護2の認定が下りました」

 

包括支援センターへはどのように連絡がいったのですか。

 

Sさん「お店の方が民生委員さんに話して、それから民生委員さんが私に教えてくれて、地域包括支援センターに連絡してみてくださいと言ってくれて、自分で電話をしました」

 

要介護の認定が出てからは、どのような支援を受けましたか。

 

ケアマネージャー「認知症対応型デイサービスを受けられました」

 

Sさん「最初は週1回だったのですが、どうしてもお店とトラブルになることはあって、そのあと週5回通うようになりました。地域包括支援センターの方がお店の人と直接話をしてくれて、店の営業している日はデイに行って、定休日は家にいるように勧めてくれてね」

 

ケアマネージャー「そしたら今年5月には施設から『ご主人が動けなくなった』という連絡が入りました。体の大きな方ですから奥さまひとりの介護は大変です。そこで介護サービスを変更し、すぐに車イスとベッドを導入しました。それまでは2階でお布団を敷いて寝ておられました」

 

Sさん「立てなくなっちゃってね、2階じゃどうにも。おしっこなんかも粗相したりね、着替えなんかもね」

 

ケアマネージャー「2階での寝起きは夜中のトイレで1階まで下りなければならなくて心配だったので、それまでもベッドのご提案はしていました。でもご主人が環境の変化に敏感で、カッと怒りに変わって拒否してしまう可能性があったので様子を見ていたのです。ご本人にとっても負担が和らぐこのタイミングで搬入させてもらいました」

「それからデイサービスの朝の送迎を追加しました。それまで朝は奥さまが施設まで送り届けてらっしゃったのを、施設からお迎えに来てもらうようにしました。そして介護認定の変更申請をかけました。デイに行く日も週5日から毎日に切り替えました。お家にいるとどうしても座りっぱなしになってしまったりとか、奥さまの負担も大きいので」

 

普段のコミュニケーションの内容に変化はありますか。

 

Sさん「んー、別に変わらないですけどね。たまに大きな声で怒鳴ったりすることはありますけど、帰って来たら食事して、テレビ見て、少し話しかけたりしてね。部屋の中だけは歩けるものだから、おトイレに行ったり、ベッドで横になったりも自分でしています」

 

ケアマネージャー「ただお家の中もね、壁や家具を伝いながらの歩行で不安な部分があったので、ご主人の生活動線に手すりを取り付ける工事を入れました」

 

そのあたりも包括支援センターの方が相談に乗ってくれたのですか。

 

Sさん「うん、ケアマネさんがね、教えてくださって。仲介してくれました」

 

提案してくださる人がいて良かったですね。

 

Sさん「そうですね、ぜんぜん分からないものね。デイ施設なんかもね、どこにあるかとか知らないしね。それで施設に行けば歩行訓練とかね、本人の調子を見ながらやっていただけてるみたいです。おかげでね、次第に歩けるようになってきたものだからね」

 

ケアマネージャー「理学療法士がお家に合わせて、実際の段差に対応したトレーニングをしてくれたりとか、普段の生活を考えたいろいろなことをしてくれていますね。認知症向けなので一般のデイサービスとはちょっと違って利用者は少人数で、職員の人数は少し多いんですね。体操や脳トレなどご興味のあることを、個人個人ひとりずつ、本人の性格を理解した上で表情を見ながら対応してくださっています」

 

Sさん「穏やかに過ごさせてもらっているみたいでね。細やかに対応してくれるし、ショートステイの利用の様子を写真付きで報告してくれたりね。土日も365日利用できて助かります」

 

ケアマネージャー「頑張ってご主人の介護をされてたんですけど、今度は奥さまの体も痛みが出るようになり、(ご主人の)ショートステイも利用されるようになりました」

 

 

ご主人の介護サービスを利用するようになってご自分の生活は変わりましたか

 

Sさん「うん、おかげとね、ちょっと遠いとこへ用事にも行けたりね、時間ができて助かってます。今は逆にゆっくりしちゃってね(笑)。早く足を治さなきゃいけないけど」

 

ケアマネージャー「ショートステイは挑戦ではありましたね。泊まりにいくことは奥さまも心配されていて。ご主人が夜に起きることもあって、何回か施設入所のお声掛けもしてはいるんですね。でもやっぱりお家でみていきたいということで、じゃあどういう形であればできるかを話し合いながらやってきました。現在はお泊まりが月に7日程度、そのほかの日は夕方に帰って来て家で過ごしていらっしゃいます」

 

奥さまもどこかお悪いのですか。

 

Sさん「わたしね、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)。神経の通っているところが狭くなって痛くなるんだって」

 

ケアマネージャー「奥さまも週1回、半日のリハビリのためのデイサービスに行き始めました。介護保険の結果待ちの状態ではあるんですけど。車の運転はやめてしまったので、家まで迎えに来てくれて、ご主人が戻ってくる夕方までに帰れる施設を選んで通われています」

「私の印象なんですけど、デイサービスに行かれる前と比べて、奥さまの声や表情がすごく柔らかくなりました。それまでは痛みが強くて家にこもりがちになっていましたが、リハビリで同年代の人と話したり運動したりする中で良い効果が表れているのではないでしょうか」

 

Sさん「いろいろやってくれてね。全身運動したりとかね、電気かけてくれたりとかね。やりたい機械を自由に使わせてくれて。周りの人と運動したりおしゃべりしたり、みんなとても親切だね」

 

ケアマネージャー「申請の結果がはっきりとなり次第、また別のサービスも組み合わせたりしてお手伝いに入れたらいいなと思っています

今後の暮らし方についてもお考えがあれば聞かせてください。

 

Sさん「いずれ主人も私も病気が進んじゃったら家で暮らすことはできないから、施設に入れたいと思いますけど、そうなる前までは主人もひとりでは施設に行くとは言わないと思うのでね、できるとこまでは家でね(笑)。寝たきりとかになっちゃったら、入れるところがあればと思ってますけどね。親戚とも相談して、それは探してるよね」

 

ケアマネージャー「そうですね。姪っ子さんとお話しさせてもらったときに、夫婦ふたりで入れる施設というお話があったんですけれども、アルツハイマーの状態を考えるとどこでも入れるわけではないので、奥さまの条件もあわせて考えてみていくとなかなか難しいかなというところもあって。特養とかグループホームとか、いろいろ見ていきましょうねという段階ではあります。決めるのはもちろんお二人なので、情報提供させていただいて準備をしながら、それまでは健康管理を一緒にやっていけたらと思います」