いつか、我が家にもやってくる「介護」という時間。
体験してみないとなかなか実感を持てないけれど、
どんな様子なのか知りたくないですか?
介護のカタチは十人十色。
家族の状況やその時の選択によっても
いろいろな道があることを知り、
自分と似たケースから学ベる
介護の事例集をお届けします。

03
2019.1.9

第3話 Aさんの場合

【ご家族構成】

 

89歳の義母、夫、妻(Aさん)、長男の4人家族。長女と次男はすでに結婚して近くに家庭を持ち、そこに生まれた孫たちの面倒も見ながら暮らす。

ご自宅でお義母さまを介護されていますね。現在の要介護度はいくつですか?

 要介護2とはなっていますが、ここ1年足らずで認知症が進み、歩くことはもちろん、立つことも、車いすにも乗れなくなって、今は起きることもままならない状態になりました。すべてにおいて介助が必要。尿の排泄がうまくいかないのでカテーテルを使い、便の感覚がなくなっているのか、おむつの中に出していてもわからないようです。ケアマネージャーさんからの助言で、それまで週2回だったデイサービスを8月から週3回に増やしました。

介護が始まったのはいつからですか。自宅でお義母さまを介護されていますね。

 介護というか……義母は昭和55年、55歳で交通事故に遭ったんです。もうだめかという状態を何度も繰り返すほどの大きな怪我で、入院期間は1年に及びました。家をバリアフリーに建て替えて、退院した義母が家に帰ってきたその年に、私たちが結婚してという形でした。

 

 実は、結婚が決まっていたときも義母の交通事故のことは知らされていなくて。私が嫁いだ日から義母は足が不自由で、松葉杖が必要でした。その当時は大きいお婆ちゃんが脳梗塞でいて、義父は心臓病の弁膜症で。3人の障害者がいたんですよ。

 私が家に入ってきた時にはそういう状況だったので、義母の看病というよりも、大お婆ちゃんの看病に付随して3人を看るという感じでした。

 

 そのうちに子供が3人生まれ、大お婆ちゃんが亡くなるまでの7年間は、病院への付き添いなどの介護と、子育てをしながらの生活でした。それが一番下の子が保育園に入るまでのこと。私もパートにちょっと出ようかということで、お勤めするようになりました。

 

 本格的に介護に入ったのは、私が勤めを辞めた3年前です。帰宅すると義母が転んでたりすることが常々あり、これは誰かがそばに居ないとならないな、と。義父は肺気腫を患って4年前に亡くなっていて、日中、義母は家にひとりでいる状態だったのです。私は23年務めた仕事を辞め、そこで初めて介護申請をしました。

ケアマネージャーさんからはどのような提案をされましたか。

 月に一度訪問してくださってデイサービスを勧めてくれたりしたのですが、本人が嫌がったので当初はそのままひとりで介護を続けました。

 それから1年かけてやっとデイサービスへ通うようになりました。

 

 義母の体はすごく痩せてはきたんです。でも、体が動かないというのはこんなにも重いものかとひしひしと感じます。自分で立つことができれば車いすに移すのも支えるだけで済むのですが。車いすへの移動は朝と晩、主人が出社前と帰宅後にしています。

 

 去年の秋はまだなんとか動けていました。でもそれから正味1年、本当に坂を転げるように、あれもできない、これもできなくなった、あ、動けなくなってきちゃった、ついさっきのことをもう忘れちゃってる……「いまうんちが出たんだよ、おばあちゃん」「ああ、そうかね」となってしまって。

 

 デイサービスに行く前におむつやズボンを替えるのもいちいち大変。お迎えに来てくれる方が「無理に換えなくてもね、着替えを用意しておいてくれたらお風呂のときに着替えるからいいよ」と言ってくれて、あぁそうだよなと思いながら少しホッとしたりして。

 

 義母が出掛けている間はベッド周りの掃除をしたり、空気を入れ換えたり。気持ちが急くことなく買い物に行けるのもありがたいです。精神的に私もリフレッシュして、帰ってくる義母の出迎えができます。

ひ孫さんもよく家に来ているそうですね。

 昨年10月、義母の7人の子供たちが米寿のお祝いに寄せ書きを贈ってくれました。この似顔絵は孫である私の長女が描いたものです。長女はおばあちゃん子で、義母はひ孫と会うのを唯一の楽しみにしています。

 

 長女は教職に就いて市内に家庭を持っています。まだ子供が小さいので私が保育園へお迎えに行って、長女か旦那さんが迎えに来るまで家で預かっているのです。次男はすぐ近所に住んでいて、そこにも小さい孫ができまして、ときどきはその子も合わせて2人を迎えに行くこともあります。義母の介護と孫の面倒をみながらの毎日です。

ここ1年で急に悪くなったとのことですが、今のお義母さまの様子をご覧になってどのように感じますか。

 頭脳明晰で、仕分けも片付けも上手な、何でもよく分かる人でした。さすが7人の子供を育てただけのことはある、本当に頼れる、尊敬できる義母でして。私に優しくしてくれて、ですからとても義母のことが好きで……。こうなっている義母を見るのは少し辛いのですけれど……(涙)。

 こちらが何かすれば「ありがとね、ありがとね」と必ず言ってくれるのでね。「申し訳ありません」とか、ちょっと切なくなるようなね。

 だんだん子供に帰っていくとよく聞きますけど、ああホントにそうなんだなと。

 

 母の苦労してきた人生が報われているのかな、どうなのかな。子供を育て上げ、さあこれから自分の人生というときに事故に遭い、介護の世話が必要な体になってしまって。義母がいちばん情けないというか、残念だったというか、辛かったんじゃないかな、って思うんですよね。

今後、施設に預けることはお考えですか。

 義母のことは自分の親のような感覚です。好き勝手なこと言ってますし、よく怒ったりもします。

 私は義母との相性が良いのかな、外でも「親子ですか」とよく聞かれるんですよ。「えっ、お嫁さんなんですか!?」って驚かれたりして。

 

 今後も施設はまったく考えていません。主人ももうすぐ退職だと思うし、そうなれば何かの足しはなると思うし(笑)。親戚たちも気に掛けてくれています。

 家で寝ている分にはそんなに手が掛かるわけでもないし、デイサービスが嫌なら行かなくてもいいかなと思ったり。

 私は畑仕事が好きなので、少しの時間に草むしりをしたりするのが息抜きになっています。介護には根を詰めすぎないようにするのが大切じゃないかしら。

 

 これからも言いたいことはお互いに言い合って、我慢することなく自然体でやっていきたいです。私は義母のそばに居られて幸せだし、義母もそうだといいなと思います。